遷延性意識障害において争うことが多い生活費控除について
突然の交通事故で大怪我をした結果、一命はとりとめたが遷延性意識障害を発症した場合、生涯にわたる医療費や介護費用を加害者に払ってもらうよう、交渉を進めていくことになります。
しかし、被害者が思う通りの賠償金をすんなり払ってくれる任意自動車保険会社は多くはありません。
なかでも、生活費の控除が争点になって、被害者にとっては納得のいかない結果となることが多くあります。
また交通事故による賠償金には、逸失利益が含まれています。
逸失利益とは、交通事故で遷延性意識障害にならなかったら得ていた経済的利益のことです。
死亡事故の場合、不幸にして亡くなられた被害者は、生活費が要らなくなるので、「生活費控除」といって、逸失利益から将来の生活費を差し引いて逸失利益を計算します。
遷延性意識障害になったために不要となったと判断され、将来の生活費を逸失利益から差し引かれたら、被害者の逸失利益が低くなり、賠償金額が減額されます。
遷延性意識障害を発症した人は、交通事故の後も生活を維持し続けるわけですから、死亡事故と同等に生活費を控除されるのは不当に思えますが、遷延性意識障害のように回復する見込みがない後遺障害は、生活費を控除して逸失利益を計算すべきではないかという議論が根強くあるのも事実です。
裁判では、生活費控除を認める判決と、生活費控除を認めない判決が出ています。
このように、判例が定まっておらず、どのような結論がでるかわからない要素がある争いの場合、交通事故に詳しい弁護士に相談して加害者と論争していく必要があります。
もし、何も主張せずに生活費を控除されれば、生活費控除として逸失利益の数十パーセントを差し引かれてしまうかもしれません。
そのような結果にならないためには、早い段階で弁護士を代理人として、示談交渉や損害賠償請求に備えるべきです。
たとえ生活費控除が認められても安心できない
生活費控除が認められたからといって、安心するのは早すぎます。
生活費控除は、被害者が家庭でどのような立場であったかによって控除率が違います。
一家の支柱となって収入を得ていた人の控除率は低めに、扶養家族がいない単身の男子は控除率が高めに設定されています。
遷延性意識障害の患者は植物状態で寝たきりなので、一般の人より生活費が少なくて済むと、保険会社が言ってくることがあります。
実際には、生きて生活しているのですから、植物状態であっても生活費が必要であることは明らかです。
このような主張に惑わされず、正当な金額の逸失利益を主張してください。
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遷延性意識障害患者は褥瘡が起きやすいため、交通事故で家族が遷延性意識障害となった場合、褥瘡予防効果のあるベッドやマットレスを用いると、体位変換の介護が容易になる。
症状固定後は加害者に治療費は請求できないが、遷延性意識障害の場合、将来的な治療費や介護費を示談時に請求することができるため、弁護士に相談するのが望ましい。
交通事故で遷延性意識障害になった場合、保険会社は遷延性意識障害患者の余命を平均余命より短く計算して賠償金額を計算するので争点になりやすい。
交通事故が原因の遷延性意識障害患者は、長期入院や施設入居が難しく、自宅介護を選ぶケースは多い。近親者介護、職業介護人の雇用、もしくは組み合わせも可能で、それにより損害賠償額の基準が変わる。
遷延性意識障害を発症した人の5割は交通事故が原因である。これは、頭部や胸部を強打して脳に深刻なダメージを受けて脳の機能を失うためである。