遷延性意識障害患者の家族による介護の介護費用の補償は?
日本の家族制度を見ると、近年は崩れつつあるとはいえ「家制度」が頑として残っています。
家族は「家」を存続させるためにあり、家族は相互に助け合うという考えなのですが、ともすると「どんな困難でも家族中で解決しろ」との考えを生んでしまうことがあります。
仮に「家長である男性に介護が必要となった場合、妻や子、子の妻が、無償で介護するのが普通である」と、家制度の美徳とも悪徳とも取れる考え方をする人がほとんどです。
よく、「専業主婦は夫の給料で生活しているのだから」と、家事の労務作業に対して軽んじた発言を聞くことがありますが、これも「家庭内で行われることに対しては無償でされるものだ」という考えから派生していると考えられます。
しかし、交通事故を取り扱う弁護士からすると、専業主婦であっても家事労働者としてみなすため、交通事故で入院を余儀なくされた場合にはその間の休業補償を保険会社に請求します。
判例で見ると40代の女性であればおおよそ日額9500円ほどになるため、決して安い金額ではありません。
では、家族が遷延性意識障害患者を自宅で介護した場合、介護費用に対する補償はどうなるのでしょうか?
家族が介護しても介護費用が認められる
家族が遷延性意識障害患者を自宅で介護した場合は、結論から言うと、家族に対して介護費用の支払いを認める判決が出ています。
遷延性意識障害患者の介護の場合、そばにずっといなければいけませんが、食事や排せつ物の処理、体位変換などの時間のほかは、通常の家事などはこなすことができるため、介護費用は日額8000円ほどの判決が下りることが多いです。
ただし、遷延性意識障害のほかに、交通事故の受傷による臓器不全などがあり、さらに手厚く介護が必要な場合には、増額を認めた判例もあります。
遷延性意識障害の患者家族が保険会社と示談交渉した際に、「ご家族が介護される場合には、介護費用を支払いません。そのため自宅介護よりも、病院などの医療施設での療養をお勧めします」と言われることがほとんどです。
弁護士からこの発言の裏側を説明すると、
「遷延性意識障害で自宅介護を認めてしまうと、本人に対する保険金のほかに、介護費用や自宅のリフォーム代など多額の保険金の支払いが発生するため、それは避けたい。
病院で療養してくれた方が保険金が何百万・何千万も安く済むため、病院での療養をするように考え直させよう」
という保険会社の意図があります。
そのため、保険会社に介護費用の請求をあきらめる必要はないのですが、自宅介護自体を裁判所が否定することもありますので、示談交渉の前に弁護士に相談をしてみた方が良いでしょう。
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家計の中心である人が遷延性意識障害となると、患者家族の生活費がなくなり困窮することがある。そのような場合には仮渡金の請求を加害者側にするとよい。
交通事故により負った遷延性意識障害の示談をする場合、将来的な介護も考えて交渉しなければいけないので、弁護士に相談をして示談交渉を進めるとよい。
遷延性意識障害患者を自宅介護する場合には、おむつ以外にも衛生管理用品が必要となり、費用が負担となる事がある。弁護士に示談を頼んでおけば、そういった費用も含めて請求をしてもらえる。
遷延性意識障害患者を在宅介護する場合、保険会社が介護費用の支払いに抵抗することがあるので、弁護士と相談して在宅介護の必要性を立証すると良い。
交通事故により遷延性意識障害となった場合、自宅介護を認められるにはいくつかの条件がある。裁判で認められて適正な介護費用を提示されるためには、弁護士に依頼するのもひとつの手である。