遷延性意識障害患者の自宅介護、誰が介護する?
交通事故で家族が遷延性意識障害となった場合、交通事故の示談や病院の付添など家族がいなければいけないことが、いきなり山積みになります。
交通事故直後は病院に搬送されて、3か月ほど入院することになり、その間は病院が手厚く介護するため、家族は付き添いの役割が大きいです。
しかし、容態が安定してくると『療養型の介護施設に入所するか、自宅介護するか』と、『自宅介護ならば誰が介護をするのか』という問題が出てきます。
遷延性意識障害患者が未成年の場合は、親が介護することがほとんどだと思います。
遷延性意識障害患者が結婚をしていたり、高齢者で子が複数いるといった場合、『誰が介護者となるか?』で大きくもめることがあります。
高齢者の介護でもよく見られるのが、『長男だから』、『同居していたのだから』といった理由で、自宅介護をしようとするケースです。
自発的に言い出し、かつ自分が介護の中心となるのならば問題は小さく済むのですが、『長男が見栄を張って引き取ると言ったが、介護は妻に丸投げしたため妻が怒って別居・離婚してしまい、介護が立ち行かなくなる』、『別居している兄弟が「施設に入れるのは可哀想だから、自宅介護しろ」と、同居している兄弟に言うものの、手伝いや金銭的な援助を行わず、兄弟間で大きな溝が出来る』というのはよくあります。
介護者は身内でなくてもいい
また、遷延性意識障害の配偶者のみが介護して、患者の兄弟や子などは一切介護を行わないといったケースもあります。
このようなケースでは負担が配偶者の1点に集中するだけでなく、介護の不安や孤独感が常に付きまとい、うつ病を発症するケースも珍しくありません。
交通事故で遷延性意識障害となった場合の損害賠償金は、療養施設を利用する場合と自宅介護をする場合では、倍の差があると言われています。
自宅介護の場合は自宅のリフォーム代や介護費がかかるため、療養施設を利用するよりも高額になるからです。
そのため、『自宅介護ならば、保険会社から倍のお金を受け取れるのだから、自宅介護をしたらいいのでは?』と、安易に考える方も中にはいらっしゃいます。
しかし、倍の損害賠償金が受け取れたとしても、実際にその分の出費が伴いますし、介護を行う家族の負担を考慮すると、安易に自宅介護を選択するのは得策ではありません。
そのため、『遷延性意識障害となった父の介護を、自宅で母が一人ですると言っているが、絶対に無理なのではないか?』と思われるかもしれませんが、そうでもありません。
判例では自宅介護する場合には、職業介護人の雇用が認められており、その雇用費用を加害者側に請求できます。
つまり、家族だけで介護するのではなく、派遣看護師やホームヘルパーなどを利用して介護していくというのが、裁判所も認める考え方だと言えます。
『遷延性意識障害患者の介護をどのようにしていくか』という悩みは、医学的な事は医者に、経済的や示談については弁護士に相談すると、多角的に検討が出来ます。
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遷延性意識障害患者は褥瘡が起きやすいため、交通事故で家族が遷延性意識障害となった場合、褥瘡予防効果のあるベッドやマットレスを用いると、体位変換の介護が容易になる。
交通事故の加害者側に、遷延性意識障害患者の自宅介護の費用を請求するには、患者家族がクリアしなければいけないハードルがいくつかある。
遷延性意識障害の患者を自宅介護する際にはヘルパーの存在が欠かせないが、多くの場合雇い入れる費用は自己負担である。
遷延性意識障害の自宅介護のためにリフォームする場合、リフォームの箇所が認められなかったり、加害者側がリフォーム費用を支払ってくれないといったケースがあるため、事前に弁護士に相談をした方が良い。
遷延性意識障害となった患者家族の中には、医療機関ではなく自宅療養を選択する人もいる。交通事故による遷延性意識障害ならば、自宅介護で必要な費用も含めて請求ができる。