家族が遷延性意識障害となった場合の慰謝料について
交通事故で加害者もしくは保険会社から支払われる損害賠償金は、基本的には交通事故に遭われた本人に対して支払われるものです。
交通事故で遷延性意識障害になられた場合の損害賠償の代表的なものは、治療費・休業補償金・逸失利益・後遺障害慰謝料・将来的介護費等がありますが、これらはすべて交通事故で遷延性意識障害になられた患者本人に支払われるものです。
遷延性意識障害患者家族の中には、「交通事故で、家族の日常生活が奪われた。」と憤る方も多くいます。
遷延性意識障害患者家族にも、何かしら補償があれば怒りや悲しみが慰められるかもしれませんが、実際にはハードルが高いです。
死亡事故の場合、損害賠償金を受け取るべき被害者は亡くなっているため、配偶者や子といった法定相続人が故人の損害賠償の請求権を有します。
その他に、家族を亡くした事への慰謝料の請求権を、遺族が個別に有しているため、請求することができます。
ハードルの高い患者家族への慰謝料
一方で、被害者が生存している場合には、後遺障害慰謝料などの名目で被害者本人に支払うため、通常は被害者家族への慰謝料はありません。
しかし、後遺障害が重い場合には、家族に対しても慰謝料が認められたケースもあります。
認められたケースは「15歳の子が脳挫傷で後遺障害第1級に認定された。子の将来の成長への楽しみを奪われ、将来に不安を抱きながら介護する生活を余儀なくされた両親に対して各500万円ずつ慰謝料を支払うものとする」というものです。
この判例のポイントは、被害者の年齢がかなり若いという点です。
被害者の年齢が若いほど、子の成長する楽しみを奪われた年月が大きくなりますし、介護の期間も長くなります。
これは被害者の両親の心情をくみ取った判決と言えますが、一般的な交通事故に多い中高年齢の被害者の場合だと厳しいと言えます。
中高年齢の被害者が遷延性意識障害となった場合、家族が慰謝料請求するとなると配偶者からが大多数になると予想されます。
しかし、夫婦の場合は、『夫婦相互扶助の義務』があります。
民法の第752条に『夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。』とあり、『夫婦は助け合わなければいけない』という考えが裁判所にはあります。
そのため、配偶者が遷延性意識障害となったとしても、もう片方の配偶者が助けなければいけないため、慰謝料請求をするのが難しいと言えます。
遷延性意識障害患者家族が、交通事故の加害者に対して慰謝料を請求することは難しいので、事前に弁護士に相談をして交通事故の示談に臨むほうが良いでしょう。
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交通事故で遷延性意識障害となった場合、むち打ちや死亡事故などとは異なる損害賠償の請求項目がある。将来的に余計な経済的負担を負わされないためにも、抜けなくチェックする事が大切である。
家計の中心である人が遷延性意識障害となると、患者家族の生活費がなくなり困窮することがある。そのような場合には仮渡金の請求を加害者側にするとよい。
遷延性意識障害の患者を自宅で家族が介護する場合、家族による介護費用の補償がされることがあるが、絶対的なものではないため、示談前に弁護士に相談をするほうが良い。
交通事故により遷延性意識障害となった場合、自宅介護を認められるにはいくつかの条件がある。裁判で認められて適正な介護費用を提示されるためには、弁護士に依頼するのもひとつの手である。
遷延性意識障害は交通事故を原因とする傷病の中でも、損害賠償の金額が極めて高額になりやすい。その点、保険会社と争点になる事も珍しくないため、弁護士を雇うことを視野にいれるべきである。