遷延性意識障害の症状固定はいつが良い?
交通事故による遷延性意識障害で問題の一つとなるのが、「症状固定をいつするのか」と言うものがあります。
症状固定とは、治療をしても今の状態以上の回復が望めない状態を差し、文字通り「症状が固定した(変動しない)」状態を表します。
なぜ症状固定の時期が重要であるかというと、症状固定前の医療行為は傷病を完治もしくは改善させるための治療であるが、症状固定後は現状を維持するためのリハビリや悪化させないための治療であるというふうに、考え方が違うからです。
そのため、かみ砕いた言い方をすると「遷延性意識障害が改善する見込みがある治療ならば治療費を支払うが、治療しても良くならないのならば無駄である。なので、その時点の傷病の状態を後遺症として認めて、将来的な損害を一括して慰謝料として支払うので、その中から遷延性意識障害の治療をするなりなんなりを、被害者側で決めてくれればいい」と言うのが、交通事故の保険会社の考え方なのです。
つまり、症状固定で大きな問題となるのが、症状固定をしてしまうと保険会社から治療費が支払われなくなると言う事で、莫大な治療費がかかる遷延性意識障害の患者家族からすると、症状固定のタイミングを誤ると死活問題になりかねません。
遷延性意識障害の症状固定は1年半以降が多い
医学的な遷延性意識障害の認定には、一定の症状が3カ月以上継続することが条件になっています。
そのため、論理上では最短で交通事故から3カ月で、遷延性意識障害の症状固定することができます。
しかし、3カ月という短期間で遷延性意識障害の症状固定をすることは、ほぼありません。
いくつか理由があるのですが、その一つに後遺症認定があります。
後遺症の認定には、6カ月以上の治療期間があることが基本となっているからです。
もう一つは遷延性意識障害の初期の段階では、治療やリハビリにより遷延性意識障害のレベルの改善がみられることが多いので、医師も慎重に判断を下すことが多いからです。
そのため、遷延性意識障害に携わる医師の多くは、1年半を目安に症状固定をするかどうか決める傾向があります。
ですが、症状固定が遅くなればなるほど、被害者家族に損害補償金などのまとまった保険金が受け取れないことになりますので、生活費に困ることがあります。
そのため、保険会社から一時金と言う形で保険金の先取りをしたりする方法もありますが、急場しのぎにしかならないこともありますので、症状固定のタイミングも含めて弁護士に相談をした方が良いでしょう。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故により遷延性意識障害となった場合の示談の時効は、交通事故後3年ではなく症状固定後3年になるため、時効を気にして無理に症状固定をする必要はない。
遷延性意識障害は交通事故を原因とする傷病の中でも、損害賠償の金額が極めて高額になりやすい。その点、保険会社と争点になる事も珍しくないため、弁護士を雇うことを視野にいれるべきである。
交通事故による遷延性意識障害で症状固定する場合、症状固定後は治療費が支払われなくなることもあるので、示談中も治療費を支払ってもらえるように保険会社に交渉しておく方が良い。
症状固定後は加害者に治療費は請求できないが、遷延性意識障害の場合、将来的な治療費や介護費を示談時に請求することができるため、弁護士に相談するのが望ましい。
遷延性意識障害の被害者が、交通事故の示談成立前に死亡した場合、示談内容はいったんリセットされる。交通事故との因果関係を確認しながら、改めて損害内容を確認、手続きを行う。