遷延性意識障害の症状固定後の治療費は誰が支払うの?
交通事故で遷延性意識障害となった場合、金銭的な面で一番気にかかるのが治療費だと思います。
交通事故で受傷した場合、基本的には受傷した者が治療費を支払い、その後の示談で過失割合に応じた分を相手と相殺して相手から受け取る、もしくは支払うことになります。
遷延性意識障害の治療には、交通事故から症状固定まで数か月~数年は入院することになるので、月に50万以上かかる入院費用を考えると、非常に高額になると言えます。
そのため、加害者が自動車保険に加入している場合は、被害者である遷延性意識障害患者の治療費・入院費用を保険会社が病院に直接支払いをして、被害者側が支払いをせずに済む方法が取られることがあります。
被害者側としては高額な遷延性意識障害の治療費を、一時的とはいえ負担せずに済むため、ありがたい制度ではあるのですが、症状固定をして示談後の治療費の支払いをどうすればよいか悩むことがあります。
症状固定後の治療費は自己負担
交通事故による治療の考え方は、『事故で負った怪我が完治するまでか、これ以上治療しても良くならないので現在残っている症状は後遺障害とする症状固定までの治療費は、交通事故の当事者が過失割合に応じた治療費用を負担すること』になります。
例えば、交通事故の当事者A・Bがおり、過失割合がA:B=1:9、Aの治療費が1000万円、Bの治療費が100万円だったとします。
その場合、AはBにBの治療費の1割の10万円、BはAにAの治療費の9割の900万円を支払いますが、相殺してBが890万円治療費として支払います。
完治したのならば治療費を支払い終わりますが、症状固定をして後遺障害が残った場合には、後遺障害慰謝料を支払います。
後遺障害慰謝料はあくまで慰謝料なので、示談後の治療費ではありません。
しかし、遷延性意識障害の場合、亡くなるまで治療や介護の必要性が生じます。
そのため、症状固定後も継続して治療や介護が必要な場合には、示談時に将来の治療費や介護費用を請求できます。
また、健康保険の高額医療の限度額適用認定を受ければ、収入に応じた上限までの支払いで済みます。
他にも、自治体独自で遷延性意識障害患者の治療費の減免や補助を行っているところもあります。
1つ注意なのが、交通事故の後遺障害等級認定で1級や2級を受けたからと言って、自動で身体障害者の認定はされず、別に手続きが必要となります。
さらに、身体障害者1級の認定を受けても、医療費の減免が直ちに受けられるのではなく、ほとんどの自治体で手続きをして審査を経て認定されるので、示談前に手続きを終えておくのがベストでしょう。
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交通事故により遷延性意識障害となった場合の示談の時効は、交通事故後3年ではなく症状固定後3年になるため、時効を気にして無理に症状固定をする必要はない。
交通事故の被害者が遷延性意識障害の場合、将来の治療費が莫大である事と、加害者側の一方的な主張が通り、被害者側が不利になる事が多いので、弁護士への相談は必須ともいえる。
遷延性意識障害の症状固定は、莫大な治療費の問題と絡んでいるので、弁護士と相談の上、慎重に決めた方が良い。
交通事故による遷延性意識障害で症状固定する場合、症状固定後は治療費が支払われなくなることもあるので、示談中も治療費を支払ってもらえるように保険会社に交渉しておく方が良い。
遷延性意識障害患者の家族が就業しており、家族での介護が難しい場合でも職業介護士を雇って介護することは可能であるため、示談時に将来的な介護費用を請求するとよい。