交通事故による遷延性意識障害の示談の時効はいつ?
交通事故で遷延性意識障害となった場合、示談の時期をいつにするのかが問題になってくることがあります。
交通事故の損害賠償請求の時効は3年ですので、基本的には交通事故から3年以内に加害者へ損害賠償請求しなければ、損害賠償権がなくなり損害賠償金がもらえなくなります。
そのため、「交通事故の示談は3年以内にしないといけない」という考えが、一般的に浸透しています。
しかし、遷延性意識障害の場合、遷延性意識障害との診断の要件を満たすには「遷延性意識障害の症状が3カ月以上続く」ことが条件であるため、最低でも交通事故から3カ月経たないと、遷延性意識障害として示談交渉が出来ないことになります。
実際には交通事故から3カ月で、遷延性意識障害の示談をすることはほぼありません。
3カ月というのは遷延性意識障害と診断される最短の期間であるだけで、治療により緩やかでも改善の兆しがみられるのならば、症状固定とならないからです。
交通事故の示談は、被害者が完治もしくは症状固定をしてから行われるものであるため、遷延性意識障害が確定したからといって直ちに示談交渉が始まるものではないのです。
ある協会のデータによると、遷延性意識障害となった患者が症状固定までに要する期間は、発症(交通事故日)から1年半~2年が中央値で、中には5年以上たってから症状固定された例もあります。
遷延性意識障害での示談の時効は?
上記のデータを見ると、「症状固定までに2年以上かかっているのならば、示談交渉をする時間がなかったり、そもそも3年以上かかってしまえば、示談の時効が過ぎてしまっているのではないか?」との疑問が出てくると思います。
ひき逃げなどで加害者が分からない場合を除き、損害賠償請求は交通事故後3年なのですが、これは交通事故の被害者の被害状況により時効の時期が変わってきます。
死亡事故の場合の時効は、死亡した日から3年となりますので、交通事故の日とずれることがあります。
人身事故の被害者が完治した場合は、交通事故から3年が時効の期限となります。
そして、人身事故で後遺障害が残った場合には、「症状固定をした日から3年」が時効となります。
つまり、交通事故から5年後に遷延性意識障害の症状固定をした場合には、症状固定日から3年になるため、事故日から起算すると8年後が時効の時期になると言えます。
症状固定するまでは加害者側に治療費の請求ができ、時効を気にせず治療ができるメリットがあるため、患者に治療による改善がみられる場合には、時効を気にして無理に症状固定をする必要はないと言えます。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
遷延性意識障害の症状固定は、莫大な治療費の問題と絡んでいるので、弁護士と相談の上、慎重に決めた方が良い。
交通事故による遷延性意識障害で症状固定する場合、症状固定後は治療費が支払われなくなることもあるので、示談中も治療費を支払ってもらえるように保険会社に交渉しておく方が良い。
症状固定後は加害者に治療費は請求できないが、遷延性意識障害の場合、将来的な治療費や介護費を示談時に請求することができるため、弁護士に相談するのが望ましい。
交通事故における示談交渉には時効が存在する。遷延性意識障害を負った場合も例外ではなく、しっかりと期間について意識しておく事が、損害賠償を請求する際には重要である。
遷延性意識障害は交通事故を原因とする傷病の中でも、損害賠償の金額が極めて高額になりやすい。その点、保険会社と争点になる事も珍しくないため、弁護士を雇うことを視野にいれるべきである。