遷延性意識障害となった際に直面する介護と仕事の両立問題
交通事故でご家族が遷延性意識障害となった場合、医師から「介護のために患者に付き添って欲しい」と要望が出されることがあります。
その時、専業主婦の母や妻など仕事に従事していない家族が介護にあたる事が多いのですが、家族全員が仕事をしていたり、他にも介護を要する家族がいたりする場合などは、『遷延性意識障害患者の介護人を誰にするのか?』が大きな問題となります。
看護士資格所有者やヘルパーなどの職業介護人を雇うという選択肢もありますが、金額的な問題と『なるべく自分自身で付き添いたい』という家族の心情的な問題があります。
仕事を持っている家族が介護にあたる場合、一番の問題となるのが雇用問題です。
会社勤めの家族からすると、介護のために病院に詰めるとなると、休職せざるを得ません。
一番多いケースでは、有給休暇を消化してなくなった後は無給の休職扱いで休むパターンです。
しかし、これでは家族の給料が激減してしまい、交通事故で家族が遷延性意識障害となってしまう心労に加えて、金銭的な問題まで発生してしまうため、家族が大きなストレスを抱えてしまう事になります。
職業介護人と育児・介護休業法の利用を
実際、交通事故の被害者であるはずの遷延性意識障害患者の家族が、示談前の介護問題に直面して弁護士に相談をされるケースがあります。
職業介護人を雇うための金銭的な問題であれば、介護人が必要と医師から認められていれば、加害者側にその費用を請求することができます。
また、その際に職業介護人を雇うのではなく、家族が介護にあたった場合でも介護費用の請求をすることができます。
しかし、医師から介護人が必要かどうか指示されていなかったり、交通事故直後で容体が不安定な患者を家族が自主的に見守りをしたかったり、遷延性意識障害との診断が下りて自宅で介護をしたいと思ったりした場合、『家族が仕事を休む』という問題に直面します。
会社を休むという事で心配になるのが、『会社が休ませてくれない』・『休んでいる間の収入が減る』・『休むと言ったら辞めろと言われる』・『休職後の昇進にも影響があるのでは?』といったことです。
『男性の育児休暇問題』で育休がクローズアップされていますが、実は育休は『育児・介護休業法』が関係しており、介護でも休業することができます。
利用に条件はありますが、雇用保険加入者であれば『年間3回、93日を上限として取得できる』ので、『交通事故後の急性期に45日、半年たって退院した時に48日休業する』といった取得の仕方も可能です。
また、介護休業とは別に『年間5日を上限とし、半日単位で取得できる介護余暇』というものがあり、職業介護人やヘルパー・医師との打ち合わせなどで休みたい場合などにも利用できます。
これらを利用中は雇用保険より給与の67%の休業手当が支給されるため、介護と仕事を両立したい遷延性意識障害患者家族は積極的に利用するとよいでしょう。
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遷延性意識障害患者の将来的な介護費用は若年の患者であるほど高額となるため、将来的な介護プランをきちんと立ててから、加害者側に請求を行った方が良い。
遷延性意識障害患者の家族が自宅介護を希望しても保険会社が反対する場合には、自宅介護が行える要件を満たしているのならば、裁判所も自宅介護を認めるため、もめた場合には弁護士に相談をした方が良い。
交通事故が原因の遷延性意識障害患者は、長期入院や施設入居が難しく、自宅介護を選ぶケースは多い。近親者介護、職業介護人の雇用、もしくは組み合わせも可能で、それにより損害賠償額の基準が変わる。
遷延性意識障害患者を患者家族自身で介護していくためには、医師や弁護士など専門的な相談先を多く持っている方が、思わぬ解決方法や自分にあった解決方法が見つかる可能性が高くなる。
遷延性意識障害であっても、医学的にリハビリは有効と考えられており、音楽療法やアロマ療法など様々な種類がある。