遷延性意識障害の介護における選択肢と担い手は?
交通事故被害者が遷延性意識障害となったとき、家族に降りかかる大きな問題のひとつが、介護をどうするのかということです。
介護が大変だからといって長期入院できるのかといえばそれは難しく、受け入れ病院が見つかったとしてもごく短期間で入退院を繰り返さなければなりません。
介護施設でも、遷延性意識障害患者の世話は大変でリスクが高いと見なされ、なかなか受け入れ先はありません。
そうなれば選択肢は自宅介護です。
ただし自宅介護が認められるのにも、いくつかのハードルがあります。
まずは患者の容態です。
患者が高齢で何度か危篤状態に陥っていたり肺炎などを発症したりしていれば、自宅での介護は難しいと判断されます。
次に介護に適した住居を準備できるかどうかです。
賃貸で改装ができない場合には自宅介護は認められないでしょう。
介護者がかなり高齢だったり、介護知識、技術の習得が難しいと考えられる場合、定期的な往診や緊急時の入院など連携できる病院がない場合も、自宅介護は困難と判断されます。
これは自分たちでなんとかできるかどうかという問題ではなく、交通事故の損害賠償請求時に、「自宅介護を条件とした賠償金を請求可能かどうか」の判断基準となります。
将来にわたり十年以上、場合によっては数十年の介護を続ける可能性がある遷延性意識障害では、介護費用をきちんと請求することがとても重要です。
近親者介護と職業介護人、選択肢はケースバイケース
遷延性意識障害患者の自宅介護が認められる場合、家族が介護をするのか職業介護人を雇うのかによっても、請求する介護費用が違ってきます。
介護する家族には日当として8,000円を支払うことをベースに費用請求に含めるのが基本ですが、支払いを抑えたい保険会社は「介護の作業時間だけを計算すれば1日4時間程度だ」といった意見で半額以下の日当を提示してくることがあり、注意が必要です。
一方、職業介護人を雇う場合には実費か日当12,000円程度が認められることが多く、もしも仕事を辞めて介護に専念することを考える場合は、辞めずに職業介護人を雇った方がいいのかどうか、よく考えた方が良いでしょう。
現実的な問題として、ルール上職業介護人には出来ないケアがあり、職業介護人を雇ったとしても家族は何もしなくていいというわけではありません。
近親者と職業介護人を併用したり、近親者が高齢になったときには職業介護人を雇う予定とするといったケースバイケースの介護を計画し、交渉することが必要になります。
どうするのがベストなのかは、交通事故の示談のプロである弁護士にアドバイスを求めてみてください。
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遷延性意識障害患者の将来的な介護費用は若年の患者であるほど高額となるため、将来的な介護プランをきちんと立ててから、加害者側に請求を行った方が良い。
遷延性意識障害患者の家族が自宅介護を希望しても保険会社が反対する場合には、自宅介護が行える要件を満たしているのならば、裁判所も自宅介護を認めるため、もめた場合には弁護士に相談をした方が良い。
遷延性意識障害患者は褥瘡が起きやすいため、交通事故で家族が遷延性意識障害となった場合、褥瘡予防効果のあるベッドやマットレスを用いると、体位変換の介護が容易になる。
交通事故で遷延性意識障害を負った場合、施設介護か自宅介護かの選択は難しい。弁護士に依頼すれば自宅介護を選択するにあたって問題を段階的にクリアしていける。
遷延性意識障害を発症した人の5割は交通事故が原因である。これは、頭部や胸部を強打して脳に深刻なダメージを受けて脳の機能を失うためである。