遷延性意識障害患者の自宅介護を保険会社に反対されたら?
交通事故でご家族が遷延性意識障害となった場合、被害者の治療に関する問題や保険会社との示談交渉など、様々な問題が発生するのですが、その中でも大きな問題となるのが、患者をどこで療養するかという事です。
交通事故に遭った直後は、ほとんどの場合で搬送された救急病院に入院することになるのですが、急性期の治療が過ぎて遷延性意識障害との診断が下りた時点で、交通事故から最低でも3か月以上が経過しています。
現在の健康保険制度では治療のための入院は、同一病院では3か月が上限とされているため、3か月を過ぎると別の病院に転院か、長期入所が可能な療養型医療施設か、自宅での介護の3択を迫られます。
どの場合でもメリット・デメリットがあり、遷延性意識障害患者の家族の事情などもあり、一概にどうするのがベストであるとは言いきれません。
反対に患者家族が「療養型医療施設に入所させたい」と望んでも、地理的に遠方であったり、療養型医療施設のベッドの空きがなかったり、療養型医療施設があっても遷延性意識障害患者の受け入れをしていないこともあります。
そのため、自宅での介護を希望される患者家族もいますが、自宅介護が出来ないといったケースもあります。
保険会社の反対は気にしなくてよい?
遷延性意識障害患者の自宅介護は、365日24時間介護になりますので、介護者の負担は非常に大きくなります。
また、ベッドの設置や入浴設備の改装などを考えると、自宅が介護に適していないというケースもあります。
他にも、患者の日々の健康管理のために、定期的な医師の往診や投薬の管理など、医療機関との連携も大切になってきます。
これらの問題をクリアしたとしても、もう一つの大きな山が保険会社との示談交渉です。
保険会社は、『遷延性意識障害患者の自宅介護は無理』、『寝たきりであると寿命が短い』、『寿命が短いのだから、介護費用などは平均余命まで支払わなくていい』という主張をしてきます。
なぜならば、遷延性意識障害患者の亡くなるまでの医療・介護費は、医療施設に入院した場合には平均して5000万円なのですが、自宅介護の場合は1億円になるため、少しでも支払いを減らそうとして、このような主張がされます。
弁護士からすると、名古屋地裁の判例でも「ベストケアを行えば、それがないよりもはるかに長生きできる蓋然性が高いことが明らかであるのに、費用が高過ぎるとしてベストケアを受ける費用分の損害賠償を認めないということは、そのベストケアを受けたとしても一般人ほどには長生きできそうにない被害者に対して余りにも酷な話であり、人道上許されないように思われる。」とされており、到底保険会社の主張を認めることは出来ません。
ただ、一般の方が保険会社に対抗して示談を進めることはかなり困難であるため、交通事故直後から弁護士に相談をして、不条理な保険会社の主張を抑制する方が良いでしょう。
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交通事故が原因の遷延性意識障害患者は、長期入院や施設入居が難しく、自宅介護を選ぶケースは多い。近親者介護、職業介護人の雇用、もしくは組み合わせも可能で、それにより損害賠償額の基準が変わる。
遷延性意識障害になると、やがて施設療養を続けるか、自宅療養するかを選択することになるが、保険会社の意見をうのみにせずに熟慮の上で選択しなくてはならない。
遷延性意識障害患者は褥瘡が起きやすいため、交通事故で家族が遷延性意識障害となった場合、褥瘡予防効果のあるベッドやマットレスを用いると、体位変換の介護が容易になる。
交通事故に遭い遷延性意識障害となった場合、遷延性意識障害患者は健常者と比べて感染症に罹患する確率が高いため、自宅介護する場合には介護者が日頃から十分に観察とケアをする必要がある。
遷延性意識障害患者が長期入院するには、医療制度から難しい面があるが、長期入院を実施している医療療養型病院もわずかながらにある。