遷延性意識障害の成年後見人を交代することはできる?
交通事故で遷延性意識障害となられた家族の成年後見人の手続きをされた後で、諸事情から成年後見人の交代を検討しなければいけない時があります。
成年後見人の交代が考えられる事情は
1.成年後見人が死亡
2.弁護士などの専門職が成年後見人となっていたが、廃業または資格を失った
3.成年後見人が、病気や高齢となり、業務を遂行することが困難となった
4.成年後見人が転勤などで、被成年後見人の居住地から遠方に引っ越さなければならなくなった(海外を含む)
5.成年後見人の生活環境(仕事や子育て・遷延性意識障害患者以外の介護など)が多忙となったため、業務の時間が取れなくなった
6.成年後見人に課される財産管理や家庭裁判所に対する定期報告が面倒であるため
7.被成年後見人の親族から見て、成年後見人の活動に疑問がある
8.成年後見人となった人が、財産の使い込みなどで損害を与えている
などが代表的なものとして考えられます。
1や2の場合には、成年後見人自体が死亡していたり、有資格者でなくなったりしているため、速やかに代わりの成年後見人を立てる必要があります。
意外に困難な成年後見人の交代
3・4の場合は、家庭裁判所の判断にもよりますが、認められるケースが多いです。
遷延性意識障害の患者の場合、成年後見人の不在自体が不利益とみなされるため、成年後見人の任務の遂行が困難である場合には交代が認められます。
しかし、5・6に関して家庭裁判所が認めないことが多いです。
なぜならば、最初に遷延性意識障害患者の成年後見人となる際の注意点などを、裁判所の方から成年後見人候補の人に説明しているからです。
裁判所からすると「成年後見人となる前にちゃんと説明していて、それでも成年後見人になるかと確認したのに、途中で放り出すのは罷りならん」ということなのです。
一番厄介なのが、7・8のケースです。
成年後見人以外の人から、「成年後見人が遷延性意識障害の患者の財産を食いつぶしている」「患者の事を考えずに療養施設への入所を勝手に決めた」と申し出られたとしても、裁判所もそれが事実であるか確認する証拠がないからです。
申し出が本当のこともありますが、成年後見人から外れた親類が嫌がらせで根も葉もないうわさを立てている可能性もあります。
また、「高額ではあるが、効果があると言われているリハビリを継続的に受けさせている」「3カ月後に転院するよりも、長期療養ができる医療機関に入院させた」と、成年後見人からすれば正当な活動であっても、「無駄遣いをしている」「施設に押し付けた」とうがったとらえ方をされる場合もあり、判断が難しいという面があります。
家庭裁判所も「財産を横領して自分の遊興費に使った」「自分の株の損失補てんのために財産を流用した」など、明らかに被成年後見人の財産や利益を脅かしている者でない限り、成年後見人の交代は認められません。
そのため、初めの成年後見人の選定に関しては、患者家族も慎重を期して決める必要があります。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
遷延性意識障害の患者が被成年後見人と認定されると、選挙権などの公民権の停止が行われる。
遷延性意識障害の財産管理は成年後見人がおこなうが、財産の不当な減少を防ぐために、金銭貸借や贈与などをすることは認められていない。
遷延性意識障害患者の後見人に弁護士がなった場合、メリットデメリットの両方があるため、事前に患者家族が希望する人物が後見人となれるように、弁護士に相談をした方が良い。
遷延性意識障害患者の財産や契約の管理には成年後見人が必要である。4親等内の親族が裁判所に申立書類を提出し、審判を経て成年後見人になることができる。
若年の遷延性意識障害患者は余命が長く、介護期間も長くなる傾向があり、様々な問題が起きやすいため、弁護士に事前に相談をしておく方がいい。