遷延性意識障害患者の公民権はどうなるの?
交通事故で遷延性意識障害となった場合、患者本人の意思表示が困難となります。
そのため、遷延性意識障害の患者名義の不動産の売却や財産の使用などは、本人の意思確認が取れないため、たとえ配偶者や子供であっても勝手にすることはできません。
日常生活でよくありがちな、「夫名義の口座に振り込まれた給料から、生活費を引きだす」という行為も、患者が健康な状態であれば「事前に意思確認が取れていた」「引き出した後に同意を得ていた」ということで問題が起こりませんが、遷延性意識障害の状態であれば、厳密に言えば違法に当たります。
そのため、遷延性意識障害の患者家族の多くが、成年後見人の手続きを取られます。
遷延性意識障害患者を被成年後見人、配偶者などを成年後見人とすることで、患者家族が患者の資産を利用することができます。
「患者自身にそんなに資産もないし、わざわざ家庭裁判所に手続きして、成年後見人となる必要もないのでは?」と思われるかもしれませんが、交通事故で遷延性意識障害となった場合、保険会社から支払われる保険金は被害者本人の銀行口座に振り込まれます。
また、それ以前に保険会社との示談交渉は、被害者本人が意思表示できないため、成年後見人が代わりとなって行わなければいけないため、成年後見人の手続きは必須と言えます。
遷延性意識障害の患者にとって、成年後見人の手続きは必須であることは理解していただいたと思いますが、成年後見人制度にもいくつか欠点があります。
その一つに公民権の停止があります。
被成年後見人の公民権は?
公民権は、選挙に投票する、選挙に立候補するなどの権利なのですが、ある一定の要件を満たす人は、公民権が停止されます。
禁固刑以上の判決を下された者(執行猶予を除く)のほかに、被成年後見人も公民権の停止が適用されます。
遷延性意識障害の患者が選挙に立候補するのは不可能に近いため、あまり問題となりませんが、選挙権の停止については患者家族の間でも意見が分かれる問題です。
「遷延性意識障害で動くこともままならず、意思表示が出来ないため、公民権が停止されるのは仕方がない」という意見もあれば、「遷延性意識障害の患者と言えども一人の人間で、たとえ投票に行けないとしても、公民権がはく奪されるのは納得いかない」という意見もあります。
特に、選挙権を持つ家族が同居している場合などは、「選挙のハガキが私宛には来るが、遷延性意識障害の妻には届かない」と、選挙のたびにもやっとした感情を抱かれることも多いそうです。
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遷延性意識障害の成年後見人の交代には条件があり、交代が認められない場合もあるため、初めの成年後見人の選定には慎重を期する必要がある。
遷延性意識障害となった患者に親類がいない場合は、市区町村の首長が弁護士などを後見人として指名して、家庭裁判所に成年後見制度の申請をすることになる。
遷延性意識障害患者の財産や契約の管理には成年後見人が必要である。4親等内の親族が裁判所に申立書類を提出し、審判を経て成年後見人になることができる。
遷延性意識障害患者の後見人に弁護士がなった場合、メリットデメリットの両方があるため、事前に患者家族が希望する人物が後見人となれるように、弁護士に相談をした方が良い。
遷延性意識障害の患者と言えども、患者名義の資産があり、それに対して課税される税金に対しては、税金の納付義務が生じる。