遷延性意識障害患者の成年後見人になるための手続きとは?
家族が遷延性意識障害となったときに考えるべきことのひとつが、成年後見人をどうするかです。
法務省により定められた成年後見人制度は、認知症などで判断能力をなくした方の財産管理や各種契約など、本人でなければできない行為を代行するのに適切な人物を決めるための制度です。
過去には配偶者がそのまま後見人となることができましたが、その責任の重さを考慮し、現在では4親等内の親族が裁判所に申し立てることで、審判を経てその適性を確認するルールになっています。
現実には、交通事故によって被害者が突然遷延性意識障害となった場合に、配偶者や子供が後見開始の申立をしないまま、本人の代理として加害者側と交渉するケースは多く見られます。
ただしその場合、交渉がうまくいかずに調停や裁判を行いたいとなったときに、親族であっても後見人でなければ、裁判を起こすことはできないのです。
いずれにしても遷延性意識障害となった家族の代わりに、銀行口座を確認したり生命保険の請求を行いたい、不動産の売却を行いたいなど、契約や財産が関わるシーンでは、成年後見人制度を利用せざるを得なくなります。
成年後見人になるためには
後見開始の審判申立は、配偶者、被害者の子ども、兄弟姉妹など、4親等内の親族であれば行えます。
被害者本人の登録住所を管轄する家庭裁判所に、必要書類と申立費用を提出すると、申立後1~2ヶ月で審判が行われます。
申立費用そのものは、収入印紙代と切手代の4000円程度であり、遷延性意識障害では必要ないことが多いですが、別途医学的鑑定を指示される場合にはその依頼費用として数十万円かかります。
これらの申立費用は、加害者への損害賠償請求に加えられることを覚えておきましょう。
申立を個人で行う場合、家庭裁判所へ相談に行くと、成年後見人制度についてのVTRを鑑賞ののち事務員と面談をし、申立書と説明資料を渡されます。
その資料に従い、症状の経緯、後見人となる目的や反対する親族の有無など、事細かに状況を記入していきます。
申立書を提出すると同時に裁判所での面接を受け、問題がなくスムーズに進めば2週間ほどで、遅くとも2ヶ月~半年ほどで判決が出て、成年後見人になれるかどうかが決まります。
後見人になった後も責務の確認のため、被後見人の財産の出納について年に1度は報告書をまとめ、提出する義務があります。
判断がつかない方の財産を着服しようとする悪質な犯罪を抑止するために定められたルールですが、突然の事故に遭った被害者親族という立場であってもこのような制度を利用せざるを得ません。
成年後見人制度の手続きについては、交通事故による遷延性意識障害に詳しい弁護士に相談してみるのがおすすめです。
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遷延性意識障害となった患者に親類がいない場合は、市区町村の首長が弁護士などを後見人として指名して、家庭裁判所に成年後見制度の申請をすることになる。
遷延性意識障害患者の後見人に弁護士がなった場合、メリットデメリットの両方があるため、事前に患者家族が希望する人物が後見人となれるように、弁護士に相談をした方が良い。
遷延性意識障害の患者が被成年後見人と認定されると、選挙権などの公民権の停止が行われる。
成年後見人による遷延性意識障害患者の財産運用は、元本保証がされた安全性の高いものに限られて利回りがよくないので、示談時に十分な損害賠償金を受け取ることも必要になってくる。
遷延性意識障害の成年後見人の交代には条件があり、交代が認められない場合もあるため、初めの成年後見人の選定には慎重を期する必要がある。