遷延性意識障害患者の成年後見人が財産管理をする際の注意点
交通事故で遷延性意識障害となった場合、家庭裁判所において成年後見人の手続きが取られます。
遷延性意識障害患者は意思表示や決定が出来ないので、代わりに行う後見人が必要となってくるからです。
成年後見人の大きな仕事に、遷延性意識障害患者の財産管理があります。
交通事故で遷延性意識障害となった場合には、加害者側から多額の損害賠償金が支払われることがあります。
損害賠償金はあくまで交通事故に遭った遷延性意識障害患者の財産なので、後見人が勝手に使うことは許されません。
成年後見人となったものは、1カ月以内に被後見人(遷延性意識障害患者)の財産目録を作成し、今後の収支予定表も同時に作成して家庭裁判所に提出しなければいけません。
また、1年ごとに後見事務報告書、財産目録、収支状況報告を家庭裁判所に提出しなければいけません。
そのため、成年後見人となった時点で示談が済んでいない場合には、示談が終了して遷延性意識障害の損害賠償金を受け取った時点で、後見事務報告書、財産目録、収支状況報告の3点に収入として記載をしなければいけないことになります。
被後見人の財産を守るのが大原則
こうしてみると、「成年後見人が被後見人の財産をある程度好きに使えるのでは?」と思うかもしれませんが、そうではありません。
成年後見人であっても財産管理をする上でNGや黒に近いグレーゾーンのものもあるので注意が必要です。
1つが金銭の貸借です。
親族間で無利子の貸借はよくある話なのですが、成年後見人制度においては遷延性意識障害患者の財産を減少させる危険性があるため、原則として禁止されています。
2つ目が、金銭・財産の贈与です。
贈与は直接的に遷延性意識障害患者の財産を減らすことになるので、原則として禁止されています。
しかし、入学祝いや卒業祝い、結婚祝い、香典など、社会通念上遷延性意識障害患者が支払うのが妥当と思われるものに関しては、金額が大きく逸脱していない場合には認められることもあります。
3つ目が、家族に対する生活費です。
遷延性意識障害患者の配偶者や未成年の子に対しての生活費の支出は認められますが、一般的に扶養義務のない兄弟や孫などに対しての生活費は認められないことが多いです。
また、生活費も地域・家族構成などから試算された範囲内になりますので、「妻と中学生の子ども1人で生活費が月50万円」といったような、一般的な生活費から逸脱したものは認められません。
4つ目が、使い込みです。
使い込みに関しては言語道断です。
「ほんの少し借りていただけ」「遷延性意識障害となる前に、遺産を分けてくれると言っていた」と言い訳しても、1番目・2番目の理由から許されるものではありません。
使い込みの場合は、後見人の解任だけでなく、使い込んだ分の損害賠償請求をされる可能性が高いので、絶対にしてはいけない行為になります。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
遷延性意識障害の成年後見人の交代には条件があり、交代が認められない場合もあるため、初めの成年後見人の選定には慎重を期する必要がある。
介護人が先に亡くなり遺された遷延性意識障害患者は、弁護士などが成年後見人となり、遷延性意識障害の患者名義の資産で治療を受け続けることが一般的である。
遷延性意識障害患者の後見人に弁護士がなった場合、メリットデメリットの両方があるため、事前に患者家族が希望する人物が後見人となれるように、弁護士に相談をした方が良い。
遷延性意識障害となる前に作成した遺言書であっても、遺言書作成時と状況が大きく変わっている場合には、無効となる可能性がある。
遷延性意識障害となった患者に親類がいない場合は、市区町村の首長が弁護士などを後見人として指名して、家庭裁判所に成年後見制度の申請をすることになる。