介護人が先に亡くなった場合、遷延性意識障害患者の将来は?
交通事故で遷延性意識障害となる方は、高齢の方とは限りません。
逆に20代・30代のドライバーによる事故であれば、息子が遷延性意識障害になり、父母が介護をすると言ったケースも珍しくありません。
そのため、遷延性意識障害の患者の介護家族の大きな問題に、「介護者が先に亡くなった時の、遷延性意識障害患者の将来について」と言うものがあります。
介護者が先に亡くなった時に他に頼れる親類がいない場合、遷延性意識障害の患者はどうなるのだろうかと、心配される方が多いです。
現在、遷延性意識障害に対する国が行っているセーフティネットについては、現在十分であるとはいえず、遷延性意識障害の患者家族が不安に思われるのは無理からぬことです。
また、遷延性意識障害の家族だけでなく、老老介護や認知症患者の家族も同様の悩みを抱えています。
弁護士による成年後見人が現実的
では、介護人が亡くなった場合、遷延性意識障害の患者はどうなるかというと、まずは自治体や裁判所から他の血縁者である兄弟や子供などに連絡が行き、扶養してもらえるかの確認がされます。
兄弟や子供などは扶養義務がないため、ほとんどの場合引き取りを拒否されるのが現実です。
扶養者が見つからなかった場合には、自治体の長の権限で家庭裁判所に申込み、遷延性意識障害の患者に成年後見人を制定します。
成年後見人は、遷延性意識障害患者の代わりとなって財産管理や意思決定ができるため、本人の代わりに医療施設に入所させ、本人の財産からその費用を支払うことになります。
もし、本人にその費用がない場合には、身体障害者と生活保護対象者の申請をして、国が支払うことになります。
この場合、成年後見人は弁護士や司法書士、職業介護人がなる事が多く、遷延性意識障害の患者の死亡まで後見人となる事が多いです。
交通事故による遷延性意識障害の患者でも、同様の手続きが取られるのですが、ここで問題となるのが損害賠償金です。
交通事故の示談時に十分な損害賠償金を受けている場合には、その資産管理が重要になります。
よくあるのが、弟が成年後見人になったのはよいが、遷延性意識障害の兄の貯金を自分のためにすべて使い果たし、兄が十分な医療を受けられなくなるというものです。
また、きちんと兄のためだけに貯金を使っていたが、示談時の予想余命を大きく超えて生存しているので貯金がなくなり、弟にその負担がのしかかるというものもあります。
どちらにしても、遷延性意識障害の患者や亡くなった介護人からすれば、不本意な結果となってしまう可能性があります。
そのため、介護人が存命中に信頼できる弁護士を成年後見人として制定し、亡くなった後のことも細かく指示を出しておくのが、一番の方法になります。
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若年の遷延性意識障害患者は余命が長く、介護期間も長くなる傾向があり、様々な問題が起きやすいため、弁護士に事前に相談をしておく方がいい。
遷延性意識障害の成年後見人の交代には条件があり、交代が認められない場合もあるため、初めの成年後見人の選定には慎重を期する必要がある。
遷延性意識障害となった患者に親類がいない場合は、市区町村の首長が弁護士などを後見人として指名して、家庭裁判所に成年後見制度の申請をすることになる。
遷延性意識障害の患者が被成年後見人と認定されると、選挙権などの公民権の停止が行われる。
遷延性意識障害患者の後見人に弁護士がなった場合、メリットデメリットの両方があるため、事前に患者家族が希望する人物が後見人となれるように、弁護士に相談をした方が良い。