交通事故により脊髄損傷となった場合の休業損害について
交通事故の被害者は、その交通事故が原因で怪我を負い、金銭的な損害を受けた時、加害者側に損害賠償として請求する事が可能です。
もちろん脊髄損傷と診断された場合も同様です。
脊髄損傷により四肢あるいは体の一部分に麻痺などの傷害が残った時、これまで通りに業務に従事できない可能性があります。
そうすると、仕事を休む必要性も時には出てきます。
仕事を休むとその分の収入が減り、被害者は損害を受けた事になるため、休業損害として賠償金を請求できます。
休業損害は自賠責保険の場合、「5,700円×休業日数」が休業損害額として算出されます。
しかし、1日当たりの基礎収入額が5,700円を上回る可能性は十分にあります。
その場合、実際に受け取っている基礎収入額を基準にする事があるものの、上限は1日19,000円と定められています。
サラリーマンならともかく、主婦のような立場にある場合、5,700円という金額を基準にされ、休業損害が算出されます。
ただ、主婦ですと損害額が曖昧になりやすいため、交渉がこじれぬよう、弁護士に相談してみるのも一つの手です。
逸失利益の請求を忘れずに
脊髄損傷は現在の医療技術では回復させることが難しく、脊髄のような中枢神経は自然回復も見込めない傾向があります。
よって、脊髄損傷により重度の後遺障害が残った場合、交通事故を理由に、仕事から手を引かれる事も十分に考えられるでしょう。
そうなった場合、逸失利益の請求が欠かせません。
逸失利益とは、将来的に得られるはずだった利益を指します。
交通事故に遭わなければ継続的に働き、収入を得ていたはずなため、その分の損失を請求します。
逸失利益は「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力損失期間におけるライプニッツ係数」によって算出できます。
基礎収入はサラリーマンであれば交通事故前の実収入、個人事業主であれば確定申告した金額などがあげられます。
労働能力喪失率というのは怪我が原因で、どの程度働く事ができなくなったのかを、パーセントとしてあらわしたもので、交通事故の状況では、労働災害で用いられる基準が参考にされる事があります。
後遺障害等級によって、その割合が異なったり、年齢なども考慮されたりします。
労働能力損失期間は、症状が固定されてから一般的に働ける年齢である67歳までの事です。
交通事故時の年齢を67歳から差し引く事で簡単に算出できます。
そしてライプニッツ係数は、本来は数年、数十年かけて得るはずだった収入を先にもらう訳ですから、利息がつく事にもなります。
その利息分を控除するために必要な係数です。
これらの損失を計算するには、専門的な知識が必要になる場合があります。
休業損害や、逸失利益の計算に不安があれば、交通事故に強い弁護士にご相談されてみてはいかがでしょう。
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交通事故で加害者側が自動車保険に加入していても、重度の脊髄損傷の場合は保険金額が足りないこともあるので、保険の内容を確認する必要がある。
脊髄損傷の症状は、交通事故発生からしばらくしてから現れることもある。事故現場で自覚症状がなくても、警察を呼んで交通事故の報告をしなくてはならない。
ライプニッツ係数は、交通事故による脊髄損傷の損害賠償に係る逸失利益や介護費を計算するうえで非常に重要な係数で、民法の改正により5%から3%へと変更された。
主婦が交通事故で脊髄損傷となった場合、被害者家族の負担が大きいのに対して、保険会社の補償金額は、仕事をしている男性の場合よりも低く提示されることの方が多い。
脊髄損傷による損害賠償の内訳は、大きく分けて積極的損害と消極的損害の2種類があり、もともとの損害に対する補償の性質が異なる。