重度の脊髄損傷では保険金が足りなくなるケースも?
交通事故の保険金というと、死亡事故の保険金が高額であるという点だけがクローズアップされますが、実際には脊髄損傷の保険金の方がはるかに高額であるケースがあります。
死亡事故の場合は、死亡慰謝料と死亡した人が得ていた給料の補てん、いわゆる逸失利益が保険金の大部分を占めます。
そのため、一般的な収入の50歳男性であれば5000~7000万円が、死亡事故で支払われる保険金になります。
しかし、脊髄損傷で1番重い介護1級の後遺障害認定がされると、後遺障害慰謝料や逸失利益のほかに、将来の介護費用や自宅介護のための改装費など、数百万円・数千万円、時として1億を超える金額が保険金として支払われることになります。
そのため、死亡事故よりも重度の脊髄損傷患者の方が保険金額が多くなることは、交通事故を扱う弁護士にとっては周知の事実であります。
実際にはそこまでの金額が支払われないケースも
このように聞くと、「交通事故で脊髄損傷となっても、保険会社がカバーしてくれるので、少しは安心できるのでは?」と思いますが、実際にはそうではありません。
任意の自動車保険の加入率は全国平均で約60%ほどで、3台に1台は自賠責保険にしか加入していないのです。
都道府県によって加入率は大きく違い、沖縄県など数県は加入率が約50%ほどです。
自賠責保険は被害者保護を目的としているため、任意の保険会社に比べて支払い条件が緩い代わりに、保険金額自体が少ないという側面があります。
そのため、加害者が資産家であるというようなことでもない限り、自賠責保険にしか加入していない場合は、自賠責保険の上限が実際には受け取れる保険金の上限となることが多いです。
また、加害者が自動車保険に加入している場合にでもこのようなことが起こります。
自動車保険の人身傷害特約は、多くの場合で1000万円刻み、もしくは「3000万円・5000万円・1億円・無制限」といった、補償上限額を任意に選ぶことができるため、毎月の保険料を抑えるために、上限を3000万円や5000万円といった低額の保険料を設定している人も多くいるからです。
中には「もしもの時のために1億円を上限としていたのに、交通事故の相手が脊髄損傷となってしまい、裁判で1億5000万円の支払いの判決を受けてしまった」といった悲劇も起きています。
自動車保険の上限を超えた分は、加害者が自分の資産から支払わなければいけないため、持ち家を売却したり、毎月の給料の中からずっと支払い続けたりと、交通事故以後の生活に大きく影響を及ぼすこともあります。
そのため、加害者が自動車保険に加入しているからと安心するのではなく、保険の内容も確認する必要があります。
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脊髄損傷による損害賠償の内訳は、大きく分けて積極的損害と消極的損害の2種類があり、もともとの損害に対する補償の性質が異なる。
交通事故が原因で脊髄損傷となったのに、加害者側からむち打ちなのではと言われたら、診断書や検査資料で脊髄損傷を立証して正当な賠償金を請求するべきである。
交通事故により脊髄損傷となった場合、損害賠償請求の時効は交通事故日から3年であるが、後遺障害が残った場合は、症状固定をした日から3年というのが判例として残っている。
交通事故による脊髄損傷で休業補償の請求では、入院期間や通院した日のほかに、医師が自宅療養の必要性を認めた場合には、通院をしなかった日に対しても休業補償を請求できる。
交通事故で脊髄損傷となった場合、生命保険からも保険金が支払われることがあるが、高度障害保険金は支給要件が厳しい場合もあるので、弁護士を通じて保険会社と交渉しても良い。