脊髄損傷のリハビリにはどれくらいの期間がかかる?
脊髄は傷つくと自己修復できないため、脊髄損傷は現在の医療技術では治療不可能と言われています。
そのため、交通事故による脊髄損傷の治療は急性期を過ぎると、リハビリを中心としたものに変わっていきます。
しかし、患者や患者家族からすると、「リハビリをしてもうまく動かないのならば、しない方がいい」「脊髄損傷は治らないのだから、リハビリは無駄」と、心が折れそうになることもあると思います。
脊髄損傷に対するリハビリの中では、しばしばADLという言葉が出てきます。
ADLというのは、「activities of daily living」の頭文字をとったもので、日本語だと「日常生活動作」と呼ばれ、BADL(Basic Activity of Daily Living)とも言われています。
リハビリの一つの指針に、腕や足などの部分麻痺で6カ月、全四肢麻痺で2年がADL取得の目安としています。
そのため脊髄損傷の治療で、交通事故から3カ月を要した後にリハビリを始めた場合には、交通事故から9カ月~2年半経った時点で、ADLを取得しているかどうかが大きなポイントとなってきます。
リハビリの終了と示談時期に注意
しかし、現行の医療制度では入院は最長3カ月で、リハビリ専門病棟併設型でも最長6カ月となります。
そのため、単純計算でもリハビリを含めて入院しようと思うのならば、最低1回は転院せざるを得なくなります。
また、「リハビリのためだけの入院」というのを認めていない病院も多く、退院後はやむをえず自宅療養で、リハビリは通院で行うという脊髄損傷患者が多数になります。
そういった脊髄損傷患者の中には、ADLが完全に身についていないうちに退院を余儀なくされ、脊髄損傷患者の生活が不便なだけでなく、介護する側の患者家族も大きな負担を強いられることがあります。
そうなると、脊髄損傷患者や患者家族に身体的・精神的な負担があることはもちろん、「介護のために仕事を辞めた」「家族と交代で介護するために残業が出来なくなったので、収入が減った」「入院時の治療費は保険会社が支払ってくれていたが、自宅療養だと一旦自己負担になったり、保険会社が支払ってくれないものがある」と経済的な負担が大きくなってきます。
そのため、交通事故による肉体的・精神的疲弊により、保険会社との示談交渉を早期に済ませてしまったり、反対に後回しにしすぎてしまうケースが見られます。
示談をしてしまうと基本的には治療費が支払われなくなるため、脊髄損傷患者や患者家族は不安を覚えるかもしれませんが、後遺障害慰謝料などでまとまった金額が受けとれるため、将来的なプランが立てやすくなるという利点があります。
示談の際には弁護士に相談をして、将来的な経済面を見据えた示談をしてもらい、患者や患者家族はリハビリに専心するというのが一番だと言えます。
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遠方地で交通事故に遭い脊髄損傷で入院した場合、 移動に耐えうる容体と転院先が確保できていれば、治療中であっても転院をすることができる。
脊髄にかかる衝撃が保護している範囲の限界を超えると脊髄を構成する神経が傷ついて脊髄損傷になる。脊髄損傷となった場合には、まずは弁護士へ相談するのが望ましい。
脊髄損傷で行われる手術は、神経除圧術と脊髄固定術があるが、どちらも脊髄損傷を根本から治癒するものではなく、対処療法としての手術になる。
脊髄損傷の入院期間は、国が定めた規則により例外と認められない限り6カ月を超えると入院基本料の15%が自己負担になるため、ほとんどの人が6カ月以内に退院する。
交通事故での脊髄損傷の診断書は、医師しか作成できないため、患者は医師と日ごろから円滑な連携をとる必要がある。