交通事故で脊髄損傷となった場合、どんな手術が行われるの?
現在の医療技術では、脊髄損傷は不治の障害とされています。
脊髄損傷は、背骨(脊椎)内の神経の束である脊髄が断裂した状態を指すのですが、この脊髄は他の神経組織や体組織と違い再生ができず、切れてしまうとくっつかないため、不治の病とされています。
「脊髄損傷の治療で手術をします」と医師から言われても、脊髄損傷の知識がある方ならば、「治らないのに手術をしてどうするのだ?」と疑問を持たれるかもしれません。
しかし、手術することにより脊髄損傷の症状を緩和したり、悪化を防ぐことができたりするため、手術が行われることがあります。
交通事故で脊髄損傷となった場合、脊椎の骨折を伴うことがあります。
脊髄は脊椎の中を通っていますので、骨折した骨片により脊髄を圧迫したり、時として脊椎を新たに損傷する危険性があります。
例えて言うのならば、ストローが脊椎・うどんが脊髄で、ストローの中にうどんが通っている状態だとします。
ストローが折れてささくれ立ってしまうと、ストローが折れてとがっているところで、中のうどんを傷つけてしまったり、真っ二つに切ってしまう危険性があります。
それを予防する意味で、脊髄損傷でも手術をすることがあるのです。
神経除圧術と脊髄固定術
脊髄損傷に関係する手術には大きく2つあります。
1つが神経除圧術です。
脊髄は神経の束であり、筋肉を曲げる、体温調節をする、痛覚や触覚などを脳に伝えるなどの神経の伝達を、電気刺激という形で行っています。
折れた骨などが脊髄を圧迫してしまうと、この電気伝達が阻害されてしまうため、手足に痺れが出たり、痛覚などの感覚麻痺が起こったりします。
この場合、折れた骨片を除去したり、脊髄を圧迫している骨の出っ張りを削るという手術が行われます。
もともと、脊髄が圧迫されていることにより症状が出ているため、圧迫を取りのぞいて脊髄部分の炎症が治まると、劇的に回復することがあります。
当初は重度の脊髄損傷と思われた患者が、神経除圧術の手術をしたところ、軽度の症状にまで回復したという例もあります。
2つ目が脊髄固定術です。
交通事故で脊椎が複雑骨折したり、脱臼で大きくずれていたり、骨粗しょう症などで骨がもろくなっている場合には、現状では脊髄損傷ではない部分まで脊髄損傷となったり、脊髄損傷の部分がさらに拡大する危険性があります。
それを防ぐ意味で、本人の骨盤から骨をとって脊椎に移植したり、金属のプレートを使ってボルトで固定するといった手術が行われます。
この手術は、脊髄損傷を改善するというよりも、現状よりも悪くしないといった意味合いが大きいです。
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脊髄損傷は、脊椎を通る脊柱管の中にある脊髄という神経の束を傷めると発症する神経の病変で、脊椎損傷は、脊椎を構成している椎骨の骨折やねんざなどの外傷です。
脊髄にかかる衝撃が保護している範囲の限界を超えると脊髄を構成する神経が傷ついて脊髄損傷になる。脊髄損傷となった場合には、まずは弁護士へ相談するのが望ましい。
脊髄損傷のリハビリ期間は、ADLを習得するのに6カ月~2年が一つの目安とされているので、患者はリハビリに専心して交通事故の示談は弁護士に任せる方が良い。
遠方地で交通事故に遭い脊髄損傷で入院した場合、 移動に耐えうる容体と転院先が確保できていれば、治療中であっても転院をすることができる。
脊髄損傷の治療で、保険を適用して再生医療を受ける場合には、期限や条件があるため、治療を希望する場合には速やかに手続き等を進める必要がある。