脊髄損傷のリハビリテーション
リハビリテーションと言うと、骨折などで筋肉を長期間動かさなかったことにより、硬直したり萎縮した筋肉を運動で元に戻したり、脳溢血などで神経伝達がうまくいかず麻痺が出た場合に運動を繰り返すことにより、スムーズに動作できるようにすることを指します。
つまり、リハビリは病気やけがで低下した身体能力を、以前の状態まで戻せるように向上させると言うのが基本になります。
しかし、交通事故などで完全脊髄損傷が起きると、麻痺した機能は回復することはないので、脊髄損傷におけるリハビリテーションは他のケースとは趣旨が変わります。
脊髄損傷のリハビリテーションは、残っている体の機能を使って、他の動作も行えるようになる事を言います。
例えて言うならば、「車いすを操れるように腕の力を強化する」、「口でペンを加えて文字を書く」、「指先を使ってパソコンを操作して意思の疎通をする」などがあります。
リハビリテーションを通じて患者ができることが増えるだけでなく、出来ることが増えることにより患者に自信をつけると言った、精神的な面でのリハビリテーションも兼ねることになります。
リハビリテーションの有用性
交通事故直後の急性期と言われる期間は、脊髄損傷の度合いを見極める重要な時期になります。
交通事故の場合多くの場合で外傷を伴うためそれらの治療に重きを置かれますが、外傷の治癒が進むと離床に向けたリハビリテーションの計画を医師や理学療法士が立案していきます。
その際に脊髄損傷の度合いによりどのようなリハビリテーションを行えばよいか、下半身麻痺ならば最終的に自力で車いすで移動できるように、ひざから下の麻痺ならば杖を使用しての歩行ができるようになど、患者一人一人に対しての状況をみながら考える必要があります。
では、麻痺があり動かない個所のリハビリは無駄かと言うと、そうではありません。
筋肉は動かさなければやせ細ってしまい、手や足の末端を流れている血液を心臓に押し戻す力も減ってしまいます。
そうなると血管内に血栓ができる血栓症が発症し、血栓が心臓の血管や脳の血管に行ってしまうと、心臓まひや脳梗塞を引き起こしてしまいます。
そのため、足やひじの屈伸運動は必須と言えます。
また、交通事故後に脊髄損傷と診断され、回復不可能な麻痺と診断された人の中にはリハビリレーションを経て、運動機能を回復した事例もあります。
「不完全脊髄損傷でかろうじてつながっていた神経がリハビリにより活性化した」、「交通事故のショックで脳からの伝達がうまくいっていなかったがリハビリにより正常化した」、などの理由が挙げられますが、これは脊髄損傷患者の絶え間ないリハビリテーションがあってのこそだと言えるでしょう。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故で下半身麻痺の脊髄損傷を負った場合、車いすの購入費用を加害者側に請求できるが、購入前にいろいろと試してから購入した方が良い。
脊髄損傷での患部回復の可能性はないとされ、治療では脊椎の安定、さらなる損傷の予防、リハビリ促進を目的とする。一方で、脊髄の再生を目指す医学的研究が続けられ、興味深い結果が出ている。
交通事故で脊髄損傷となった場合でも、運転免許試験場(運転免許センター)で適性検査を受けて審査に通れば、運転免許証を取得することができる。
脊髄損傷で行われる手術は、神経除圧術と脊髄固定術があるが、どちらも脊髄損傷を根本から治癒するものではなく、対処療法としての手術になる。
脊髄損傷では麻痺がある部分に痛みやかゆみなどを感じる幻肢痛という症状が出ることが多くあるため、幻肢痛で日常生活に支障が出る場合にはその分を含めた損害賠償請求をした方が良い。