脊髄損傷での労働能力喪失率によって変わる補償について
交通事故で脊髄損傷を負った場合、重要となるのが後遺障害等級です。
後遺障害等級が高ければ高いほど、支払われる後遺障害慰謝料が高額になるため、より高い後遺障害等級を認めてもらうことが、交通事故の示談交渉の肝とも言えるものになります。
後遺障害1級で3000万円、要介護後遺障害1級ならば4000万円が自賠責保険の補償金額の上限となるため、重要であると言わざるをえません。
しかし、対保険会社との示談交渉の場合、後遺障害等級はそれ以上に重要な意味を持っています。
後遺障害等級が決まるということは、それに付随して労働能力喪失率も決まるということを意味しているからです。
労働能力喪失率は「交通事故で後遺症を負ったことにより、どれだけ労働する能力を失ったかを数値化した物」になります。
脊髄損傷で全身麻痺となった場合には後遺障害等級1級となるのですが、1級の場合の労働能力喪失率は100%になります。
つまり、脊髄損傷の患者が交通事故の前に年収が500万円あったとしたら、年収のすべてが無くなったと計算されます。
労働能力喪失率の数%の差が数100万円の差を生むことも
労働能力喪失率は後遺障害等級により変わり、1級ならば100%ですが、一番下の14級ならば5%になります。
脊髄損傷の場合は後遺障害の重さは個人差が大きいため、それこそ1級から14級まで幅広く分布しているのが特徴です。
そのため同じ年収500万円でも、500万円全額が逸失利益として認められる人もいれば、5%の25万円だけしか認められないこともあります。
後遺障害等級による労働能力喪失率は、下記のとおりです。
第1級 100%
第2級 100%
第3級 100%
第4級 92%
第5級 79%
第6級 67%
第7級 56%
第8級 45%
第9級 35%
第10級 27%
第11級 20%
第12級 14%
第13級 9%
第14級 5%
「13級と14級なら4%しか変わらないし、年収からすれば20万円くらいしか変わらないので神経質にならなくてもいいのでは?」と考える人もいるかもしれません。
しかし、これは年収の話であって、将来的な収入の補償を考える逸失利益の計算では、さらに平均余命から出されたライプニッツ係数をかけるため、20倍近い違いを生むこともあります。
30歳代男性のライプニッツ係数は16.711であるため、先程の13級と14級の違いでは約334万円も逸失利益が変わってくることになります。
こう見ると、後遺障害等級が労働能力喪失率、ひいては逸失利益にかかわる大きなファクターになっていることがわかると思います。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故で脊髄損傷の逸失利益の計算には、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率が使われるが、労働能力喪失率の上昇が認められたり、全く認められないといったこともあり得る。
脊髄損傷が原因で復職できない場合でも、給料の100%が補償されるわけではなく、後遺障害等級に応じた労働喪失率に準じた補償がされる。
脊髄損傷の入院期間は、国が定めた規則により例外と認められない限り6カ月を超えると入院基本料の15%が自己負担になるため、ほとんどの人が6カ月以内に退院する。
交通事故による脊髄損傷で休業補償の請求では、入院期間や通院した日のほかに、医師が自宅療養の必要性を認めた場合には、通院をしなかった日に対しても休業補償を請求できる。
交通事故に遭い脊髄損傷を負って後遺障害が残った場合には、逸失利益が発生するが、被害者の職種などによっては、実情の損害とそぐわない逸失利益の額となることがある。