脊髄損傷の逸失利益での労働能力喪失率、例外は認められる?
交通事故の脊椎損傷で支払われる損害賠償の中で、脊髄損傷の後遺症の重症度によっては逸失利益が多額となることも少なくありません。
逸失利益の計算には、労働能力喪失率が大きく関係してくるのですが、後遺症が認められているにもかかわらず、逸失利益が認められなかったり、逆に大きく逸失利益を超えて認められたりするケースも判例では見られます。
全身麻痺などの重篤な脊髄損傷であれば、後遺障害等級1級もしくは2級となることがほとんどなので、労働能力喪失率は100%になります。
全身が動かないのですから、仕事が出来ないのは誰が見ても明らかであるため、これについては異論が出ないと思います。
しかし、その他の等級の場合は100%ではないため、脊髄損傷のために退職を余儀なくされ再就職も絶望的となった場合、今までの生活を維持できなくなる可能性があります。
保険会社から提示される逸失利益の計算に使われる労働能力喪失率は、後遺障害等級に準じたものとなり画一的に計算されるため、しばしば脊髄損傷患者と保険会社の間で紛争が起こることになるのです。
判例では増額が認められることも
脊髄損傷で下半身麻痺となったとしても、会社員で以前からの会社に車いすで内勤でき、労働能力が交通事故前と変わらずにあり、会社側も脊髄損傷により昇給や昇級が変わらないのであれば、労働能力喪失率は0とされて、逸失利益を認めないケースもあります。
しかし、トラック運転手の場合にはトラックの運転が出来なくなる訳ですから、トラック運転手として仕事することは不可能となります。
転職するにしても、トラックの運転以外の技能がなければ再就職は難しいですし、新たに技能を習得しても車いすということが就職の障害となる可能性もあります。
こういったケースでは、保険会社に訴え出て逸失利益の増額を要求する必要があるのですが、個人からの交渉で認めることはほぼありません。
保険会社からすれば、「第三者機関で後遺障害等級が認められ、その等級に応じて自賠責保険基準の労働能力喪失率を使用して計算している」との主張がされるため、それを退けるにはかなりの交渉を重ねないと難しいと言えるからです。
やや特殊な事例では、逸失利益の増額ではなく後遺障害慰謝料を増額することにより、保険金全体の増額を持ってそれとする判例もあるため、弁護士でも見解が難しいと言えます。
ただ、先述もしたように個人では保険会社との交渉はほぼ望めないため、弁護士に相談の上、弁護士に交渉してもらうのが現実的であると言えます。
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脊髄損傷の示談交渉における被害者の請求権には時効が存在する。そのため、時効を気にして示談を急ぎそうになるかもしれないが、時効は症状固定をしてから2年間とされているため、焦る必要はない。
交通事故による脊髄損傷で後遺症があった場合でも、逸失利益が発生しないケースでは相手側に請求することができない。
脊髄損傷の後遺障害等級は、労働能力喪失率や逸失利益と深く関係しているため、正しい後遺障害認定を受けることが重要である。
交通事故による脊髄損傷の慰謝料が、一般的な相場から増額されるケースもあるが、時代によっての変化もあるので、弁護士に確認をした方が良い。
脊髄損傷時の後遺障害等級は幅広く、麻痺の範囲・程度に加え介護の必要度が考慮される。慰謝料は1,000~3,000万円程度が多く、逸失利益額も高めの傾向がある。