交通事故の示談前に相手が失踪した場合にはどうなりますか?
【質問】
1年前に自動車同士の交通事故に遭い、脊髄損傷を負ったために車いすの生活を余儀なくされています。
相手の方は軽傷で済んだため、交通事故の当日をはじめ、その後も何回か謝罪に訪問してくれていました。
相手方との示談交渉は、お互いに自動車保険を通して話をしていますが、数日前に保険会社から相手の方が失踪されたと聞かされびっくりしました。
なんでも、交通事故を起こした直後から、私の脊髄損傷のことを気に病んでおり、歩けないことが決定的になったころから、かなり精神的に不安定となっていたそうで、失踪の数日前には会社も退職されていたそうです。
失踪した相手の方も心配ですが、保険会社から示談交渉の一旦停止を言ってこられたため、不安で仕方がありません。
もしこのまま失踪した相手の方が見つからなければ、示談交渉をすることはできないのでしょうか?
【回答】
交通事故で莫大な損害賠償を負った加害者が、夜逃げ同然に失踪してしまうという話はよく聞きます。
損害賠償責任は自己破産しても義務を免れるわけではありませんので、「失踪」という最終手段に出る加害者も少なからずいます。
被害者側からすれば、正当な損害賠償請求が出来なくなる訳ですので、とんでもない話なのですが、実情は加害者がどこにいるか判明していて、かつ経済能力がなければ、損害賠償請求をしても支払ってもらえずに泣き寝入りということが多々あります。
しかし、加害者側に自動車保険会社が介入している場合には、話は別になってきます。
自動車保険会社には、保険加入者の代わりに示談交渉をする権利があるため、保険加入者が死亡したり失踪した場合でも、被害者側は保険会社と交渉を続けることができます。
ですので、質問者の場合も相手の方が失踪したといっても、現在と変わらず保険会社同士が示談をすすめるため、問題はないと考えられます。
保険会社が一旦示談交渉をストップしているのは、失踪した相手方がすぐに帰ってくるかもしれない可能性があるためだと思われます。
1週間以上動きがないようであれば、質問者側から保険会社に問い合わせて、保険会社からの報告内容によっては、示談交渉を再開してもらうように希望しても良いでしょう。
もし、相手の失踪を理由に示談交渉を再開しないようであれば、保険会社に対して「相手が失踪しても保険会社と交渉するため、こちら側の示談交渉には支障がない」と強く言うことも可能です。
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交通事故という緊急事態では本来の性質が出やすく、不誠実な態度で謝罪のない加害者もいる。憤りを感じても冷静に対処し、十分な損害賠償を受けることに目的を絞ることが大切である。
仮に交通事故の示談交渉を弁護士に任せたとしても、保険会社と交渉する場に、被害者が同席する事は可能である。しかし、その場合にはスムーズに事を進めるために入念な打ち合わせが求められる。
加害者が加入している保険の上限額が、交通事故による損害額を大幅に超える場合には、保険会社が示談から撤退する可能性がある。
交通事故で保険会社との示談交渉が進まない場合に、加害者に直接連絡をしても法的に問題はないが、損害賠償金を支払うのは保険会社なので効果的ではない。
保険会社は約款に従って賠償金を支払うため、個人で裁判所基準の賠償金を要求しても応えてもらえない。交通事故の示談段階でも、裁判を起こすにしても、賠償金額を増やすには弁護士へ依頼すると良い。