医学的画像診断が得られないむち打ちには神経学的検査?
むち打ちの後遺症の議論において、しばしば神経学的検査が挙げられます。
むち打ちは、レントゲンやCT・MRIなどの画像による異常個所が見られないのに、首の痛みや腕のしびれなどの症状を患者が訴えている状態がほとんどです。
反対に、レントゲンやCTなどで異常個所が見つかれば、「頸髄不完全断裂」や「頸椎の変形による神経圧迫」などと、具体的な病名が診断されることになります。
つまり、むち打ちは「首を中心とした痛みや不快感を患者が訴えているが、異常個所は見当たらないので、首の筋肉の捻挫としてとりあえず見よう」と医師が診断することが多いのです。
そのため、むち打ちの患者が1カ月・2カ月と痛みを訴えても、「異常個所は見当たらない」と医師が一蹴することも少なくなく、保険会社も最大1カ月を目途にむち打ちの治療費を打ち切ってくることがほとんどです。
ですが、実際にはレントゲンなどの画像に異常が認められなくても、長期に痛みを訴えるむち打ちの患者もいます。
こういったむち打ちの患者は保険会社と対立することが多く、医師の客観的な所見が必要となった時に、神経学的検査の出番となります。
神経学的検査とは?
神経学的検査とは、文字通り神経学に基づく検査になります。
よく足のヒザをゴムのハンマーでたたくと、足がぴょこっと跳ね上がる検査がありますが、あれも深部腱反射の一つである膝蓋腱反射という検査で、神経学的検査の代表的なものになります。
神経学的検査は、患者に対して一定の刺激や動作を施した際に、本人の意思とは関係なく体の一部が反応したり、痛みを感じたりする反応を見て、神経の伝達異常や神経組織の断裂などを確認するものです。
特に脊髄反応によるものは、むち打ちの患者が意識して反応を出さないようにするのは難しいため、正常な検査を行っているにもかかわらず正常な反応が出ないということは、神経伝達のどこかに異常があるということになります。
ですが、神経学的検査のすべてが脊髄反射のように、患者の意思に関係なく反応・無反応となるものだけではありません。
首を一定方向に曲げた場合に、首ではなく神経が繋がっている別の箇所に放散痛のように現れる検査では、痛みがあったかどうかは患者の自己申告となるため、神経学的検査の中では、信頼度が低いものになります。
しかし、医学的画像診断が得られないようなむち打ち患者の場合、むち打ち症状を証明するためには神経学的検査が必要となるケースもありますので、神経学的検査を専門的にしている医療機関を見つけておく必要があります。
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むち打ちの検査は、レントゲンやCTなどの画像診断のほかに、筋萎縮テストなどの神経検査や脳波検査がある。むち打ちが長引くようであれば、画像検査のほかの検査を受けるとよい。
交通事故によるむち打ちの検査方法は多数あるが、一番重要視されるのは深部腱反射検査であり、この検査を受けている方が有利となる。
むち打ちの症状が長引く原因としては、筋肉組織の重傷、骨の損傷・神経組織の損傷などが考えられるので、MRIを主体とした精密検査をする必要がある。
むち打ちを簡単に後遺障害認定してもらうことは難しいが、積極的に通院して、事故の直後と最近の画像診断を用意するなどすれば、後遺障害を認められる可能性が高くなる。
一般的なむち打ちの場合、治療期間の最大は3カ月が目安とされているが、症状によってはそれを超える期間の治療であっても認める判決がある。