死亡事故での被害者家族が民事訴訟を起こす理由
交通死亡事故の場合、罰金刑や懲役刑などの刑事罰が加害者に課されるのですが、飲酒運転などの重大な過失が有った場合で最高20年、それ以外の死亡事故で最高7年の懲役刑となります。
しかし、最高がそれであって、実際にはもっと短い懲役年数であったり、執行猶予がついて交通刑務所に服役しなくても済むことがあり、被害者家族から不満の声が上がることがしばしばあります。
「人が死んでいるのに、加害者が刑務所にもいかず、普通の生活をしているのは許せない」と思うのは、被害者家族の感情からも理解が出来ます。
ですが、被害者家族が刑事裁判で控訴することはできません。
なぜならば、刑事裁判は検察庁が加害者に対してしている裁判なので、検察庁か被告人である加害者が控訴・上告するしかないからです。
検察庁も被害者家族の感情も考慮しますが、今までの判例に則した判決が出て、被告人が控訴しないとなると、そのまま刑が確定してしまいます。
そのため、死亡事故の被害者家族が、加害者に対して民事訴訟を起こすことがあります。
民事訴訟の意味について
死亡事故の被害者家族が、加害者を相手取って民事訴訟に踏み切る理由は様々あります。
「加害者側が提示している死亡事故の損害補償金の金額が低い」
「民事訴訟を通じて、加害者側から交通死亡事故当時の状況を聞きたい」
「加害者側の謝罪がなく、反省もないので、民事裁判の場で糾弾をしたい」
「刑事裁判で十分な刑罰を与えられたと考えられないので、民事訴訟で金銭的な制裁をしたい」
「民事訴訟を起こすことで、加害者側に心理的な重責を与えたい」
と様々で、一つの理由からではなく複数の理由から民事訴訟をされることがほとんどです。
しかし、加害者に死亡事故の反省を促したいからと、一般の常識や判例から乖離した提訴をするのはナンセンスと言えます。
仮に100億の損害賠償請求の民事訴訟をしようとしても、まず裁判所が不受理とする可能性が高いです。
また、損害賠償の金額により裁判に必要な印紙代も変わりますので、不必要に高額とするのは無駄な出費を増やすだけです。
交通事故に詳しい弁護士ならば、過去の判例と依頼者の状況を分析して、予想しる最高金額の損害補償金額を導き出しますので、民事訴訟の判決も提訴した金額に近いもので下されることがほとんどです。
そのため、民事訴訟をする際には弁護士とよく相談して、裁判の指針を定めた後に訴訟に取り掛かるようにした方が良いでしょう。
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交通死亡事故の被害者遺族が民事訴訟するメリットは、損害賠償金の上昇や加害者の重罰化などがあるため、民事裁判をした方が良いこともある。
加害者が補償内容の充実している保険に加入していないと、死亡事故の被害者遺族が弁護士に依頼しても、十分な損害賠償金が支払われないことがある。
死亡事故の慰謝料は自賠責保険基準で上限1250万円であるが、裁判では2000~2800万円とされることが多いので、大きな開きがあることがわかる。
死亡事故では3つの責任として、「刑事上の責任・行政上の責任・民事上の責任」の3つがあり、それぞれが独立した管轄が下すため、必ずしも連動しているとは限らない。
死亡事故の示談は、加害者の量刑への影響、提示された賠償金額の妥当性を考えるとすぐに応じるべきではない。裁判の進行を見つつ、示談内容をよく検討し、タイミングを見計らうべきである。