遷延性意識障害の自宅介護について
遷延性意識障害は、ほぼ完治の見込みのない傷病なので、発症したら、生涯に渡って看護、介護が必要になります。
日本の法律では、ほとんどの病気や怪我の場合、最長で6カ月入院すると、保険点数の計算方法が変わって病院が得る利益が極端に少なくなるため、転院したにせよ、入院の原因となる病気や怪我が発症してから6カ月経つと、自宅療養を勧められます。
ただし、遷延性意識障害のような重度の後遺障害者は、6カ月以上の入院が認められています。
このような法律のはざまで、遷延性意識障害患者の家族は、自宅介護と施設療養のどちらを選択するか悩むことになります。
保険会社は施設療養を勧める
遷延性意識障害の原因が交通事故の場合、保険会社は、施設療養を勧めてきます。
遷延性意識障害の被害者に支払う賠償金には、生涯に渡って必要となる介護費用や看護費用も含まれます。
これらの費用は、施設療養の方が自宅療養よりずっと安くなるので、保険会社は被害者が自宅療養するのを好まないのです。
遷延性意識障害の人が自宅で生活しようとすれば、帰宅する前に改修をして、第1級の障害を持つ人でも安全で快適に暮らせるように準備を整える必要があり、改修費用は加害者に請求することになります。
障碍者向けのレンタル用品を使えば出費を抑えられますが、それでも、実費で購入しなければならないものもたくさんあります。
家族だけでは介護の手が足りない、専門知識を持った看護師に定期的に来宅してケアしてほしいといった場合は、在宅看護サービス費用や職業看護人費用が発生します。
保険会社が、賠償金額を抑えるために施設療養を勧めるのは、会社の利益確保のためであり、被害者の健康や幸福を思って言っているのではないのです。
そもそも、加害者が交通事故を起こさなければ、被害者は遷延性意識障害で植物状態にならなかったのですから、どこで生活するかについて保険会社が指示するような態度はおかしいと言ってよいでしょう。
自宅療養は、本人にとっては望ましいことですが、家族が病人の世話をすることで負担が増えることも事実です。
遷延性意識障害の家族を自宅に連れて帰りたいが、365日休む暇がなくなると心配している方は、行政のショートステイサービスを活用してください。
ショートステイは、遷延性意識障害の人を一時的に福祉施設に入所させ、旅行に行ったり所要を済ませることができます。
ショートステイの期間はおおむね1週間です。
家族が遷延性意識障害となった場合には、交通事故の示談交渉だけでなく、介護問題も抱えることとなりますので、まずは弁護士へご相談をお勧めいたします。
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遷延性意識障害になった家族を自宅介護する場合、保険会社が介護費用の支払いに抵抗することがあるので、弁護士と相談して自宅介護の必要性を立証してください。
被害者が遷延性意識障害となった交通事故の示談では、生活費控除、在宅介護の蓋然性、余命制限、定期金賠償の4つが代表的な争点となる。保険会社の主張に対する反論の準備が必要。
遷延性意識障害患者を在宅介護する場合、保険会社が介護費用の支払いに抵抗することがあるので、弁護士と相談して在宅介護の必要性を立証すると良い。
遷延性意識障害患者は、症状固定をすると和解や判決で賠償金が決定するまで立て替え払いが増えるので、症状固定の時期を慎重に決めなくてはならない。
交通事故で遷延性意識障害となった場合、むち打ちや死亡事故などとは異なる損害賠償の請求項目がある。将来的に余計な経済的負担を負わされないためにも、抜けなくチェックする事が大切である。