遷延性意識障害の在宅介護における問題点
遷延性意識障害は、植物状態なので看護に専門知識が必要です。
たとえば、以下のような看護を遷延性意識障害の患者さんにしなければならないことがありますが、医師免許や看護師免許を持たない人は、これらの行為を認められません。
・痰(たん)の吸引(器具の種類によっては一般に人が使用できるものもあります)
・導尿
・補液(点滴)
・胃瘻(いろう)
・鼻チューブによる栄養補給
しかし、患者さんを療養病院で過ごさせず、できるだけ早期に家に連れて帰りたいと願う家族は大勢います。
遷延性意識障害の患者さんを自宅介護するには、次のような点を検討しましょう。
加害者側の保険会社と損害賠償額で話し合う時に、将来介護費用は医療機関や療養施設で過ごすことを前提に計算するべきだと主張されることがあります。
なぜなら、自宅介護の場合、看護人やヘルパーに支払う費用などがかかるので、病院や施設で介護するよりも割高になるからです。
しかし、保険会社が賠償金を節約したいという理由で、自宅介護ができないというのは理不尽です。
自宅介護が必要であり、可能であることを、証拠資料を提示して反論してください。
自宅介護にかかる費用について
・自宅改造
遷延性意識障害の家族を自宅に連れて帰り介護するにあたって、多くの場合は自宅を改造する必要があります。
遷延性意識障害の患者さんは自分で動くことができないので、通院等で外出する場合は、車椅子またはストレッチャー型車椅子で移動できるよう、室内や玄関をリフォームします。
床の段差をなくす他、部屋を移動する際に片開きドアでは車いすが通れなければ、引き戸に交換します。
自宅で入浴させる場合は、お風呂もバリアフリー化する必要があります。
2階に移動する必要がある場合は、ホームエレベーターの設置を検討します。
・訪問看護費用と訪問診療費用
前述のとおり、遷延性意識障害の患者さんの世話をするにあたって、法律上、どうしても家族にはできない行為があるので、訪問看護を依頼することになります。
健康維持のためには医師の診察も不可欠なので、訪問診療を行っている病院と契約して定期的に診察してもらうこともできます。
医師の指示で理学療法士によるリハビリテーションを行う場合もあります。
・介護雑費
療養施設では、施設使用料に介護雑費が含まれていますが、自宅介護の場合、おむつ代などの費用は、損害賠償請求の際に別途加算します。
遷延性意識障害になったご家族を自宅介護する場合は、保険会社が介護費用の支払いを渋ることがあるので、弁護士と相談して自宅介護の必要性を立証してください。
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遷延性意識障害になると、やがて療養施設に入所するか、自宅介護するかを選択することになりますが、保険会社の意見をうのみにせずに熟慮の上で選択してください。
遷延性意識障害患者を在宅介護する場合、保険会社が介護費用の支払いに抵抗することがあるので、弁護士と相談して在宅介護の必要性を立証すると良い。
介護が必要な遷延性意識障害の患者であっても、40歳以下であれば介護保険の対象外となるため、介護保険を利用できない。
専業主婦が交通事故により遷延性意識障害となったケースでも逸失利益等は認められ、交通事故以前に家族の養育や介護をしていた場合には、その家族の養育費用や介護費用を請求できることもある。
遷延性意識障害の患者を自宅で家族が介護する場合、家族による介護費用の補償がされることがあるが、絶対的なものではないため、示談前に弁護士に相談をするほうが良い。