遷延性意識障害患者の保険金の受取人は誰が該当する?
通常、交通事故に遭った場合には、自賠責保険や自動車保険会社の示談は被害者、死亡事故の場合には被害者の遺族が行い、保険金の受取人となります。
しかし、遷延性意識障害となった場合には保険金を受け取るべき被害者が、意思表示が出来ないので示談交渉が出来ないため、配偶者や親や子など近しい血縁者が行います。
示談交渉人は血縁者、保険金の受取人は遷延性意識障害となった被害者となるのですが、保険金が被害者の名義となってしまうと、例え被害者の治療のための出費であっても、保険金を勝手に使用することができなくなります。
そのため、遷延性意識障害の患者には成年後見制度で、本人の代わりに成年後見人が示談交渉を行い、保険金の受取人となり運用をします。
成年後見人には年1回家庭裁判所に後見等事務報告をする等があるため、一般的に配偶者や親などの近しい血縁者がなることが多いです。
交通事故で遷延性意識障害となった場合には、速やかに成年後見人を定めて示談交渉を行った方がよいのはわかるとは思いますが、いくつかのハードルがあります。
遷延性意識障害と認定されるのには、一定の状態が3か月以上続けなければならず、さらに家庭裁判所に被後見人が遷延性意識障害であることを理由に申し立てて認定されなければならないため、最短でも事故から半年以上かかることになります。
自賠責保険は成年後見認定前に保険金が支払われる場合も
しかしながら、家計の中心であった夫が遷延性意識障害となった場合、生活費など金銭的な困窮が問題となる事もあります。
成年後見が完了してから示談交渉では遅いと感じる被害者家族も少なからずおり、示談交渉の保険会社の甘言に乗ってしまい低い示談交渉金額で示談をしてしまう被害者家族もいます。
この場合、保険会社から示談金の先取りという形で、一時金として受け取る方法もありますが、一時金の支払い時の契約書に不利な条件が盛り込まれることもありますので、弁護士に契約書の精査をしたもらう方が良いです。
それよりも安全なのが、自賠責保険の請求です。
自賠責保険では、遷延性意識障害となった場合、「問題が生じた場合には、受取人が一切の責を負う」との条件で、成年後見人以外でも保険金が受け取ることができます。
自賠責保険は被害者側が請求する「被害者請求」をすれば、相手との示談が終わっていなくても、自賠責保険から補償金を受け取ることができます。
遷延性意識障害のケースでは最大4000万円の補償金額となるため、先に自賠責保険から受け取り、加害者側の保険会社との示談交渉は本腰を入れてゆっくりするといった方法もとれます。
ただし、被害者側で多数の書類を用意しなければいけない、加害者側の保険会社が自賠責保険に請求をする「一括請求」となっていた場合解除しなければならないなどのデメリットもあるため、弁護士と自賠責保険に被害者請求を行った方がよいのか、またするとすればどのタイミングが良いのかなどの助言を受けて行った方が無難と言えます。
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遷延性意識障害患者は、自身で加害者や保険会社に対して被害者請求を行えないため、成年後見人を選定する事が必要である。ご家族でも良いほか、相談している弁護士に任せる手段もある。
遷延性意識障害となった交通事故の加害者が、対処をしてくれず、連絡がつかない場合には、自賠責保険や任意の自動車保険会社に被害者請求をすると良い。
遷延性意識障害による損害を考えるうえで、平均余命の決定は避けられない。平均余命は賠償金の支払いを一時金賠償とするか定期金賠償とするかのメリット・デメリットにも影響し、慎重に検討する必要がある。
交通事故で遷延性意識障害となった場合、被害者と被害者の看護をする家族の補償を優先した示談がなされるべきなので、身内からの示談交渉への干渉がひどい場合には弁護士に依頼するとよい。
遷延性意識障害患者の親族が成年後見人となる事は年々難しくなってきており、親族自身が成年後見人になりたい場合には事前に弁護士との打ち合わせが必要になる。