遷延性意識障害の賠償金で争点となりやすいこととは
後遺障害等級を遷延性意識障害として申請し、認定されれば、後遺障害等級1級となります。
遷延性意識障害患者でありながら、後遺障害等級3級などということはあり得ないので、後遺障害等級を不服として争うことは、まずないと言って良いでしょう。
もし、後遺障害等級1級でなければ、自賠責保険の審査部門が、被害者の病名は遷延性意識障害でなく他の病気であると考えているからです。
ですから、交通事故で遷延性意識障害になった場合、後遺障害等級1級を前提に加害者と損害賠償額を話しあうことになります。
しかし、賠償額で合意に達するのはたやすいことではありません。
逸失利益、介護費用および介護雑費、後遺障害慰謝料などが、争点になることの多い賠償項目です。
また、遷延性意識障害患者の賠償金額で揉めることが多いです。
遷延性意識障害患者に対する賠償金の支払いで保険会社と意見が食い違う主な理由は、保険会社が遷延性意識障害患者は余命が短いと主張することです。
介護費用、介護雑費、逸失利益などは、いずれも被害者が平均余命まで生きることを前提に計算します。
遷延性意識障害を発症した人の余命が平均余命より短ければ、保険会社が支払う賠償金がより少なくなるのです。
遷延性意識障害患者の余命が短いと言われる根拠
遷延性意識障害患者の余命が平均余命より短いと保険会社が主張する根拠は、自動車事故対策センターの調査資料にあります。
自動車事故対策センターによると、植物状態の患者は、平均余命まで生存するケースが多くないという結果がでたとのことです。
加害者の保険会社側は、同センターの資料を根拠に遷延性意識障害患者の余命が短いと主張するのです。
保険会社は、遷延性意識障害患者の余命に制限があるという判例も裏付けになると主張しています。
これは、植物状態になった原告の余命年数を症状固定時から12年と推定、認定した東京高裁の判決です(平成6年5月30日)。
一方、遷延性意識障害により植物状態になった人の余命が平均余命と比べて短いとは言えないという判決も多数出ています。
保険会社が、判例を根拠に平均余命より短い年数で介護費用や逸失利益を算定し、少ない賠償金を主張してきたら、そのような事実はないと反論しましょう。
反論するにあたって、十分判例を勉強する必要がありますが、一般の人がそのような情報を得るのは難しいので、交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。
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18歳~64歳の遷延性意識障害患者は、介護保険等の公的な支援が受けられず、手当てが少なくなるため、加害者側に十分な介護費用を請求する必要性がある。
交通事故により負った遷延性意識障害の示談をする場合、将来的な介護も考えて交渉しなければいけないので、弁護士に相談をして示談交渉を進めるとよい。
遷延性意識障害における逸失利益を算出するにあたって、被害者の余命年数や生活費が問題として取り上げられやすい。場合によっては生活費が控除されるなど、賠償金が安くなる可能性がある。
交通事故の示談交渉で保険会社から遷延性意識障害患者の余命は10年ほどとの主張がなされる時があるが、裁判所は平均余命を採用している。
交通事故の被害者が遷延性意識障害となり、支払われる賠償金を分割で受け取る定期金賠償は、逸失利益で中間利息を控除しないので賠償金の総額が増える。