遷延性意識障害患者の余命を短く主張された場合には
交通事故で被害者が遷延性意識障害となった際に、加害者と争われる論点の一つに余命があります。
加害者、特に加害者の自動車保険会社から言われる主張は、『遷延性意識障害患者は健常者と比べて、余命が短い。』との主張です。
例えば、20歳男性が交通事故で遷延性意識障害となったとします。
20歳男性の平均余命は61.77年、つまり81.77歳が平均寿命となります。
遷延性意識障害患者家族からすれば、『患者が亡くなるまでの約61年間の治療費や介護費を加害者に請求する。』となるのですが、保険会社は『遷延性意識障害患者の余命は10年ほどなので、10年分しか支払いません。』と言ってきたりします。
以前は遷延性意識障害患者の寿命は健常者よりも短いという考えがあり、判例でもそれを指示するものがありました。
しかし、『医療技術や介護環境の進歩により、適切な治療と介護をすれば、平均寿命までの生存は可能』と裁判所は判断しています。
遷延性意識障害患者の余命問題
裁判所が遷延性意識障害患者が平均余命まで生存するとの計算で、介護費用などの損害賠償を行うことを支持しているにもかかわらず、交通事故の示談で問題となることがあります。
保険会社は営利会社なので、保険金はなるべく払いたくないという内情があります。
また、交通事故の示談は『交通事故の当事者同士が合意すれば示談できる』ため、現実離れをした『示談金を100億円支払う』または、『示談金はいらない』といった内容であっても当事者同士が合意すれば、法的に問題がありません。
反対に言えば、保険会社が『遷延性意識障害患者の平均余命は10年なので、10年分の介護費用で計算した示談金を支払います』と言ってきて、患者家族が『そんなものなのかな?』と合意してしまうと、法的に示談が成立してしまうことになります。
つまり、保険会社は、意図的に保険会社側に不利な情報を伝えずに、低額の示談金額での示談終了を狙っているため、このようなことが多々起こります。
一度示談に応じてしまうと、『当事者同士で合意した示談を、一方の都合で取り消す』というのは基本的には出来ないため、遷延性意識障害患者は泣き寝入りというケースがあります。
特に遷延性意識障害患者の年齢が若いほど余命も長くなり、治療費や介護費などが数千万、時として数億円の違いになることがあるので、保険会社が提示する示談内容を鵜呑みにしてしまうことは危険です。
示談前には必ず弁護士に相談をして、示談内容や示談金額が適正なものか確認してもらうようにしましょう。
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家計の中心である人が遷延性意識障害となると、患者家族の生活費がなくなり困窮することがある。そのような場合には仮渡金の請求を加害者側にするとよい。
交通事故で遷延性意識障害になった場合、保険会社は遷延性意識障害患者の余命を平均余命より短く計算して賠償金額を計算するので争点になりやすい。
家族が交通事故に遭って遷延性意識障害となり、示談交渉の際に「遷延性意識障害患者の余命がそうでない人より短い」と保険会社が主張しても、屈せずに弁護士に相談しながら正当な賠償金を請求すべきである。
遷延性意識障害における逸失利益を算出するにあたって、被害者の余命年数や生活費が問題として取り上げられやすい。場合によっては生活費が控除されるなど、賠償金が安くなる可能性がある。
交通事故により負った遷延性意識障害の示談をする場合、将来的な介護も考えて交渉しなければいけないので、弁護士に相談をして示談交渉を進めるとよい。