遷延性意識障害における逸失利益と余命の問題について
遷延性意識障害は、言い換えるなら植物状態の事を指しており、後遺障害として申請を出すと、多くの場合に第1級として認定されます。
そのため、遷延性意識障害の後遺障害に関して保険会社等と口論になるケースはほとんどありません。
ただ、逸失利益に関するやりとりは難航する場合があります。
逸失利益とは、被害者が将来的に得られたはずの利益の事を指し、その利益を損害賠償として請求できるものです。
交通事故による後遺障害を原因として退職したり、仕事を変えたりしなければならなくなった場合、発生した逸失利益を請求できます。
さらに遷延性意識障害の場合では労働能力喪失率が100%となり、逸失利益を減額なく請求できるのです。
ただ、遷延性意識障害患者の逸失利益において問題になるのは、就労可能年数です。
一般人の平均余命年数まで生存していられる可能性が低いという統計があり、場合によっては逸失利益の計算を低く見積もられる可能性があります。
一般人の平均余命年数で計算してもらう事が可能
遷延性意識障害患者の逸失利益は、相手の保険会社から平均余命より短いと判断され、減額を要求される可能性はあります。
しかし、裁判においては一般人の平均余命年数と考えられる事が多いため、通常よりも短めに算出されずに済むケースも多いです。
また、生活費においてもケースバイケースで考えられます。
遷延性意識障害となると、交通事故に遭う前と同じような生活費はかからないため、控除される場合があります。
しかし裁判の判例では、こういった控除が認められない事もあるため、保険会社との交渉や被害者の状況次第で、大きく結果が分かれます。
平均余命の話に戻りまして、通常の対象期間は67歳までと定められているため、例え余命が10年と言われていましても、最大67歳までの逸失利益を請求する事が可能です。
ただ、こういった余命に関するやりとりは保険会社との口論に発展しやすいため、被害者個人が主張しても、すんなり受け入れてくれるとは限りません。
逸失利益はたった1年の違いであっても、損害賠償額にすると相当な額面が変化するため、被害者にとっては譲るべきところではありません。
よって、しっかり一般人の平均余命年数で逸失利益を算出してもらうためにも、交通事故に強い弁護士に交渉を任せるのが、安心だと言えます。
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交通事故の示談交渉で保険会社から遷延性意識障害患者の余命は10年ほどとの主張がなされる時があるが、裁判所は平均余命を採用している。
交通事故で遷延性意識障害になった場合、保険会社は遷延性意識障害患者の余命を平均余命より短く計算して賠償金額を計算するので争点になりやすい。
交通事故の被害者が遷延性意識障害となり、支払われる賠償金を分割で受け取る定期金賠償は、逸失利益で中間利息を控除しないので賠償金の総額が増える。
交通事故で遷延性意識障害になった場合、保険会社は遷延性意識障害患者の余命を平均余命より短く計算して賠償額を計算するので争点になりがちである。
被害者が遷延性意識障害となった交通事故の示談では、生活費控除、在宅介護の蓋然性、余命制限、定期金賠償の4つが代表的な争点となる。保険会社の主張に対する反論の準備が必要。