遷延性意識障害患者の成年後見人の選定について
交通事故で遷延性意識障害になると、加害者に対して損害賠償請求をする意思表示をしたり、必要な手続きを自分で行うことが不可能になります。
正当な賠償金額を主張して加害者に払ってもらうには、被害者に代わって損害賠償請求の手続きを行ってくれる人が必要になりますが、家族や親せきが勝手に名乗りを挙げて賠償請求問題の当事者になれるわけではありません。
被害者の後見人になった人だけが、被害者の代わりに加害者へ損害賠償請求できるのです。
遷延性意識障害患者の家族で、加害者に損害賠償するには、成年後見人を選定する必要があります。
ただし、遷延性意識障害患者が未成年の場合は、親権者が法定代理人として損害賠償請求や日常生活で必要な契約ができるので、後見人を選定する必要がありません。
成年後見人とは
成年後見制度は、判断能力が不十分で意思決定できない人が、人権を侵害されたり財産を奪われるなどの被害に遭わないように支援する制度で、それまでの禁治産・禁治産制度が廃止されて2000年4月からスタートしました。
成年後見制度を利用して、遷延性意識障害患者に成年後見人を付けたい場合は、家庭裁判所に申し立てをします。
成年後見人が選任されても、日常生活で必要な行為は、成年後見人に指示されずに本人が自由に行えます。
また成年後見人の申立てができる家族は、配偶者または4親等内の親族です。
申立書には、申立人が希望する成年後見人候補者を書く欄があります。
家庭裁判所に成年後見人選定の申し立てをすると、裁判所の調査官が申立人と成年後見人候補者を家庭裁判所に呼び、事情を聞かれます。
調査官が事案を調査した後、審判が行われ、成年後見人が決定します。
多くの場合は、成年後見人候補者が後見人に選ばれますが、ときには裁判所の判断により、裁判所が選定した弁護士などの人物が成年後見人に選定される場合もあります。
審判が行われると、家庭裁判所から審判書謄本が申立人および成年後見人に郵送で届きます。
これを審判の告知と言います。
告知の内容に不服があれば2週間以内に申し立てることができますが、不服がなければ2週間経つと、審判が確定して成年後見人が決定します。
審判が確定すると、家庭裁判所は法務局に登記手続きをします。
法務局から登記事項証明書を入手したら、成年後見人は対外的に活動できます。
家族が遷延性意識障害となるとこういった成年後見人問題も発生しますので、まずは弁護士へご相談ください。
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交通事故で遷延性意識障害になった場合、保険会社は遷延性意識障害患者の余命を平均余命より短く計算して賠償金額を計算するので争点になりやすい。
遷延性意識障害患者の親族が成年後見人となる事は年々難しくなってきており、親族自身が成年後見人になりたい場合には事前に弁護士との打ち合わせが必要になる。
家族が交通事故に遭って遷延性意識障害となり、示談交渉の際に「遷延性意識障害患者の余命がそうでない人より短い」と保険会社が主張しても、屈せずに弁護士に相談しながら正当な賠償金を請求すべきである。
成年後見人は親族が良いとの最高裁判所の見解があるが、遷延性意識障害患者家族の状況によっては成年後見人となることが困難な事もあるので、弁護士に成年後見人となってもらう方法もある。
交通事故により遷延性意識障害となった場合には逸失利益が認められることが多いが、不労所得や年金に対しては逸失利益が認められないため注意が必要である。