遷延性意識障害における生活資金貸付制度を知ろう
遷延性意識障害は劇的に治ることが望めない病気なので、交通事故などが原因で発症すると、一生寝たきりの療養生活を送ることになります。
たとえ、介護保険を利用して介護サービスを受けるにせよ、自己負担金を払わなければなりませんし、質の高い看護を望めば、法律が定めるサービスの枠を超えて全額自分で払って看護や介護の環境を整えることになります。
事故に遭われたあと、経済的困窮に苦しむ交通事故被害者は少なくありません。
お金の問題は、交通事故の被害者本人だけでなく、家族みんなの生活の質にも影響を及ぼします。
加害者が支払うべき損害賠償金は、事故が発生してすぐ支払われるものではありません。
特に、遷延性意識障害のような重度の後遺障害が残った場合、損害賠償金が高額になるため、加害者側の保険会社が提示する金額に納得がいかない場合、保険金が支払われるまでに何年もかかることがあります。
さらに、判決が出ても加害者が任意自動車保険に加入していなければ、裁判で確定した損害賠償金が支払われない可能性があります。
貯金を崩して遷延性意識障害患者の看護を続ければ、家族の生活資金も苦しくなり、気持ちは晴れないまま人生に希望を見出すことすら難しいでしょう。
そこで、自動車事故対策機構(NASVA)は、交通事故の被害者に生活資金の貸付を行い、被害者とその家族が安定した暮らしができるように支援しています。
不履行判決等貸付・交通遺児等貸付とは
自動車事故の被害に遭い、遷延性意識障害などの重度後遺障害が残ったため、判決や和解で損害賠償金が確定しているにも関わらず、加害者側から支払いがない場合、NASVAで生活資金の貸付をしています(年3%の有利子貸付)。
貸付を受けて1年経過してから返還が始まり、10年以内に元利均等払いで返済します。
ただし、その間に加害者から損害賠償金が支払われた場合は一括返還しなければなりません。
1年間の据え置き期間を経たのちに返済が始まりますが、債権の弁済を受けた場合は、貸付金を一括返還しなければなりません。
交通遺児等貸付という制度もあり、遺児という名称が付いていますが、遷延性意識障害など重度の後遺障害が残った被害者の子どもも生活資金の貸付として利用できます。
貸付は無利子で、貸付後、最長で1年経立つと返還が始まり、原則20年以内に返還を終了します。
中学校を卒業した後に高校や大学等に進学する場合は、それらの学校を卒業するまで貸付金の返還が猶予されます。
遷延性意識障害の示談交渉は、知識のない患者家族が行うことは難しいため、弁護士に相談をして交通事故の示談に臨むほうが良いでしょう。
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交通事故により負った遷延性意識障害の示談をする場合、将来的な介護も考えて交渉しなければいけないので、弁護士に相談をして示談交渉を進めるとよい。
交通事故で遷延性意識障害になった場合、保険会社は遷延性意識障害患者の余命を平均余命より短く計算して賠償金額を計算するので争点になりやすい。
遷延性意識障害は基本的に介護が必要となる。職業介護人を雇う、あるいはご家族が介護をするにしても、加害者側へ介護費用を請求できるため、弁護士を雇い、相手の保険会社と交渉してもらうのが望ましい。
遷延性意識障害患者の家族が就業しており、家族での介護が難しい場合でも職業介護士を雇って介護することは可能であるため、示談時に将来的な介護費用を請求するとよい。
18歳~64歳の遷延性意識障害患者は、介護保険等の公的な支援が受けられず、手当てが少なくなるため、加害者側に十分な介護費用を請求する必要性がある。