遷延性意識障害となってもなくならない患者の権利について
交通事故で家族が遷延性意識障害となった場合、介護の大変さもありますが、長期の介護を行うにあたって出てくる問題が、『遷延性意識障害患者の権利』です。
遷延性意識障害となり意思表示が出来ないとしても、人権や所有権などの権利は健常者と変わらずあります。
夫が遷延性意識障害となったため、妻が代わりに役所や銀行などで手続きをしようとしても「本人でないとダメ。」ということが多く、困るということがあります。
特に夫名義の銀行口座からキャッシュカードを使って生活費を引き出すというのは、多くの家庭でよくある事ですが、夫が遷延性意識障害患者となった場合には要注意です。
家族の生活費のために現金を引き出すのは、やむを得ない理由と判断されることもありますが、「子供の大学入学費用のために100万円が必要。」などの場合には、あとあと「夫の了承がとれていない。妻が勝手にした事。」と判断されると、問題となることがあります。
遷延性意識障害患者の権利を守るために
そのため、家族が交通事故で遷延性意識障害となった場合、患者本人の権利を守るために成年後見人の手続きが必要になります。
成年後見人制度とは、認知症などで判断が正常に行えない場合に、後見人が被後見人の代わりとなって判断をし、財産を管理する制度になります。
誰でも後見人になれるのではなく、家庭裁判所に申し立てをして、家庭裁判所が認定をします。
申し立ての際には後見人希望者を記載することができますが、必ずしも希望者がなるとは限りません。
後見人は年一回の家庭裁判所への報告が必要な事に加えて、後見人希望者の人柄や状況を踏まえて、適任者がいない場合には弁護士等の職業代理人が選ばれます。
後見人となった者は被後見人である遷延性意識障害患者の代わりに、交通事故の示談を行わなければいけません。
その他に、預貯金や所有不動産があれば代わりに管理をしなければいけませんし、生命保険に加入をしているのならば入院保険金や高度障害保険金の受取手続き、年金保険事務所に障害年金申請、住宅ローンを支払っていた場合は銀行と話をして、団信で住宅ローンの支払いが免除となるのならばその手続き、連帯保証人を立てている場合は以降の支払いをどうするのかの打ち合わせが必要となります。
では、夫が遷延性意識障害となり妻が後見人となった場合、夫名義の財産は自由に使ってよいかというとそうではありません。
家族の生活費や子供たちの教育費などは社会通念上の常識の範囲内の出費であれば認められますが、『夫名義のマイホームを売却する』というのは、後見人の権利を逸脱しているため、家庭裁判所の許可が必要となります。
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家計の中心である人が遷延性意識障害となると、患者家族の生活費がなくなり困窮することがある。そのような場合には仮渡金の請求を加害者側にするとよい。
成年後見人による遷延性意識障害患者の財産運用は、元本保証がされた安全性の高いものに限られて利回りがよくないので、示談時に十分な損害賠償金を受け取ることも必要になってくる。
家族が交通事故に遭って遷延性意識障害となり、示談交渉の際に「遷延性意識障害患者の余命がそうでない人より短い」と保険会社が主張しても、屈せずに弁護士に相談しながら正当な賠償金を請求すべきである。
遷延性意識障害の示談金は数千万円になる事が多いが、保険会社が提示する金額は判例よりもかなり低いため、示談前に示談内容を弁護士に確認してもらうとよい。
遷延性意識障害となった交通事故の示談で患者家族が満足する示談内容を保険会社が提示してくることはないので、弁護士に依頼をして示談交渉を行う方が良い。