遷延性意識障害となった交通事故の示談の実情について
『例えば、夫が交通事故で遷延性意識障害となった場合、加害者から妻や子が十分な補償が受けられているか?』と言われると、ほぼノーと言えます。
「加害者が自動車保険に加入していたら、保険会社から示談金が入るでしょう?仮に保険に入っていなくとも、自賠責保険から保険金がもらえるはず。」と思われる方もいますが、この時点で思い違いが生じています。
まず、交通事故で遷延性意識障害となった場合、後遺障害等級は介護第1級となるため、自賠責保険からは最高4000万円が支払われます。
4000万円と聞くと高額に思えますが、実際には『足りない』のです。
例えば、『40歳で年収500万円の男性』が交通事故で遷延性意識障害となった場合、65歳までの25年間分つまり『500万円×25年間=1億2500万円』の損失が発生し、ライプニッツ係数を掛けた逸失利益額は『500万円×17.413=8706.5万円』と、自賠責保険の補償額では半分にも満たないのです。
しかも、遷延性意識障害の場合には、患者が亡くなるまでの一生涯にわたり介護が必要となるため、介護費用も別途必要となってきます。
患者家族が不幸にならないためにも慎重な示談を
交通事故の示談の際に、保険会社からこういった話がされるかと言うと、ほとんどありません。
『本来ならば保険会社が多く支払わなければならない』という、保険会社にとって大変都合の悪い話なので、当然と言えば当然です。
実際には、「自賠責の基準では4000万円が最高額なので、遷延性意識障害の場合、本来ならそのくらいなのですが、こちらの誠意をみせますので、5000万円で示談しませんか?」との保険会社の言葉巧みな話に、『本当なら4000万円しか貰えないのに1000万円も上積みしてくれるなら。』と示談してしまう人がほとんどです。
本来ならば逸失利益の8706万円に25年分の介護費用の3000万円以上(自宅介護か施設介護など、ケースにより変わります)を足した金額を示談で請求できるのですから、保険会社からすれば『5000万円で済んだ』と、保険会社の得にしかなっていないのです。
しかも、弁護士目線からするとこれは最低ラインと言えます。
自宅介護となれば自宅のリフォームが必要になりますし、往診で診察も必要になりますので、その費用も掛かってきます。
施設介護であっても、雑費が必要となってきますし、施設を転院する際には介護タクシー(救急車タイプ)の手配が必要になりますので、その費用が必要となってきます。
弁護士に依頼をして示談を行えば、こういった細かい項目に対しても示談で同時に請求をしてくれるため、将来の金銭的な不安をかなり軽減できることと思います。
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交通事故により遷延性意識障害となった場合、自宅介護を認められるにはいくつかの条件がある。裁判で認められて適正な介護費用を提示されるためには、弁護士に依頼するのもひとつの手である。
交通事故で遷延性意識障害を負った場合に、自宅介護を選択すればさまざまなケアが必要になる。また、保険会社との交渉のために弁護士に依頼するのが適切である。
遷延性意識障害となった被害者は意識不明のため主張ができず、加害者の言い分に沿った過失割合での示談成立になりがちなため、弁護士と相談してきっちり反論する必要がある。
交通事故の遷延性意識障害の示談の場合、示談のタイミングが難しいのと示談金額の交渉が難しいため、弁護士に任せた方が良い。
遷延性意識障害の患者を自宅で家族が介護する場合、家族による介護費用の補償がされることがあるが、絶対的なものではないため、示談前に弁護士に相談をするほうが良い。