遷延性意識障害の示談でのいくつかの注意点について
遷延性意識障害に限らず交通事故の示談は、プロである弁護士であってもタイミングが難しい時があります。
遷延性意識障害の場合、「患者が生きているけれども、患者自身の意思確認が出来ない」というのが大きなネックです。
そのため、遷延性意識障害患者に代わり、家族が加害者や加害者の保険会社と示談することになるのですが、示談するにあたりいくつかの注意点があります。
まずは、遷延性意識障害患者の成年後見人を、家庭裁判所に認定してもらう必要があります。
交通事故の損害賠償請求権は、交通事故の被害者本人に帰属します。
未成年や死亡事故でない限り、本人か本人に依頼された弁護士しか示談を行うことができません。
そのため、遷延性意識障害患者の場合には、成年後見人制度を使い、後見人が示談に当たる必要性があります。
金額とタイミングに注意
成年後見人が決まった後で本格的な示談がはじまると思いますが、注意したいのが金額とタイミングです。
遷延性意識障害の場合、入院費や治療費が毎日かかるということなので、示談後は治療費が支払われないことを考えると、早すぎる示談は危険だと言えます。
また、保険会社から初期に提示される保険金額は最低ラインの補償金額で、判例に基づく損害賠償金額からすると数倍の差があることが通常なので、早期に示談をすると低額の示談金額で示談を済ませてしまう可能性が高いです。
交通事故の補償範囲というのはとても広い上に、それぞれに金額の算出方法が違っていたり、例外もあったりするため、一般人が正確に判例に基づく示談金額を算出するのは困難であると言えます。
他にも、保険会社は基本的に一般人が示談交渉した場合の上限金額を社内で定めていて、一般人の交渉で弁護士による交渉や裁判の判決に基づく金額の示談は、ほぼ望めないという事情があります。
そのため、「遷延性意識障害の患者家族が1億円請求した時は、6000万円しか支払えないと言っていたのに、弁護士を雇って交渉したとたんに1億円の示談がすんなり通った」ということが多々あります。
保険会社によっては、「これ以上の金額で請求されるのであれば、弁護士を通してください」と言うところもあります。
これは一般人の請求と弁護士からの請求の上限金額が社内の規定で違っているため、保険会社の担当からすると、「弁護士からの請求でないと、これ以上の金額は会社が認めない」ということなのです。
こういったことからも、個人で保険会社と示談をするのではなく、弁護士に示談交渉を任せた方が得になる事の方が、圧倒的に多くなります。
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遷延性意識障害の示談金は数千万円になる事が多いが、保険会社が提示する金額は判例よりもかなり低いため、示談前に示談内容を弁護士に確認してもらうとよい。
交通事故により負った遷延性意識障害の示談をする場合、将来的な介護も考えて交渉しなければいけないので、弁護士に相談をして示談交渉を進めるとよい。
最低限の賠償を補償するのが自賠責保険、不足分を補填するのが任意保険である。示談成立に時間がかかる遷延性意識障害では、被害者請求を利用しながら両保険金の受取法を選択すると良い。
遷延性意識障害の示談交渉では、裁判した場合の損害賠償を前提として示談金を増額できる可能性がある。その参考となるような高額な賠償金判決例を紹介。
被害者が遷延性意識障害となった交通事故の示談では、生活費控除、在宅介護の蓋然性、余命制限、定期金賠償の4つが代表的な争点となる。保険会社の主張に対する反論の準備が必要。