遷延性意識障害となった場合に選定する成年後見人について
2019年3月18日、最高裁判所は「成年後見人は親族が望ましい」との見解を示しました。
2008年度の成年後見人の申請は25,000件ほどであったのですが、2018年度は35,000件を超えており、10年で10,000件以上の増加となっています。
しかし、2008年度の成年後見人における親族の割合は約70%、弁護士や司法書士などの第三者が約30%であったのに、2018年度では親族が23%、第三者が77%と逆転現象が起こっています。
遷延性意識障害患者の親族、特に家族としては「誰が成年後見人になるか?」という問題を避けられず、また将来的に成年後見人を続けられるかも問題となってきます。
遷延性意識障害患者に近しい親族がいない場合には、市町村長の指定により弁護士や司法書士などの第三者が成年後見人となりますが、「遷延性意識障害患者の家族が高齢者しかおらず将来的に不安」、「遷延性意識障害患者の親族が一人娘で遠方に嫁いでいる」など、親族が成年後見人となるのは困難な事情がある場合も多くあります。
そういった事情からか、第三者による成年後見人の割合が増えてきていたのですが、今回の最高裁判所の見解はその状況に一石を投じる形になりました。
第三者の成年後見人選びは慎重に
「自分たちが成年後見人になろうか?それとも弁護士に頼もうか?」と悩まれている遷延性意識障害患者家族も多くおり、いったんは成年後見人になったものの重責から、弁護士に依頼することを検討されている方もいます。
弁護士は法律の専門家であるため依頼すること自体は問題がないのですが、事前に心得ていなければいけないことがいくつかあります。
1つ目は成年後見人の費用です。
弁護士が成年後見人となる場合には、成年後見人に選定するのに数十万円かかり、成年後見人の基本報酬は月20,000円で、財産額が1,000万円以上5,000万円以下なら月30,000~40,000円、5,000万円超なら月50,000~60,000円とされています。
交通事故で加害者側から高額な損害賠償金を受け取るケースも少なくなく、5000万円を超える場合には、年間60~72万円の弁護士費用が必要となってきます。
2つ目が弁護士の選定です。
弁護士が交通事故による遷延性意識障害の知識が豊富でない場合、患者がかかっている医療機関や療養機関と連携が取れず、質の高いケアが受けられない可能性があります。
また、熟練の弁護士が見つかったとしても、弁護士自身が高齢で依頼がためらわれるといったケースもあります。
3つ目が、他の親族の理解です。
成年後見人の候補が1人だけである場合などは、その方の意思だけで第三者の成年後見人を選ぶことが容易ですが、夫が遷延性意識障害となり、成年後見人候補が妻と子供2人の3人であった場合などはもめるケースがあります。
「自分も高齢だし子供に任せたい」と言う母と、「老母に任せるのは不安だけれども、自分は遠方に住んでいるし、弁護士に頼む方がいい」「弁護士費用で遺産が減るのは嫌だけど、面倒なことはしたくない」といった子供たちの場合、三者三様の思惑から「弁護士には頼みたくないけれども、自分がするのは嫌」という状況が生まれやすくなります。
これらの事を十分検討してから、親族後見人か第三者後見人かを決める方が良いでしょう。
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遷延性意識障害の方には成年後見人の選任が必要なことが多いですが、弁護士に依頼する場合などでは毎月、報酬の支払いが発生する。総額としては大きな費用で、損害賠償に含められる。
遷延性意識障害の後見人と実質の介護を行う家族が違う場合には、家族の意に沿わない示談を代理人が行ってしまう事もあるので、事前に弁護士に相談をして示談方針を固めておく方が良い。
遷延性意識障害患者の後見人に弁護士がなった場合、メリットデメリットの両方があるため、事前に患者家族が希望する人物が後見人となれるように、弁護士に相談をした方が良い。
交通事故が原因で遷延性意識障害となった患者は意思表示ができないので、交通事故による損害賠償請求をするには成年後見人を選任する必要がある。
遷延性意識障害患者は、自身で加害者や保険会社に対して被害者請求を行えないため、成年後見人を選定する事が必要である。ご家族でも良いほか、相談している弁護士に任せる手段もある。