遷延性意識障害となった際は、身体障害者認定は早めの申請を
交通事故で遷延性意識障害となった場合、医療制度や社会保障制度に詳しい病院であれば、国の身体障害認定を受けることを勧められると思います。
病院などから遷延性意識障害の診断がおりたのならば、ほぼ国の身体障害認定の1~2級の認定がされます。
1~2級は身体障害は障害等級の中でも最も重いとされるもので、ほとんどの医療機関で治療代が無料もしくは月500円などの大幅な負担減となります。
そのため、症状固定により損害保険会社からの治療費の支払いがなくなった場合でも、治療費に悩まされることが少なくなります。
また、障害年金の受給資格の1級に相当するため、ひき逃げや無保険車による事故などで、加害者から損害補償金を受け取れない場合には、有効です。
身体障害認定と障害年金の受給資格の認定は基準が異なるのですが、身体障害認定1級を受けていると比較的に障害年金の受給資格の認定がスムーズに行くことが多いです。
身体障害者の認定は、保険会社に対する後遺障害認定とも異なるため、症状固定や後遺障害認定が済んでからでないと、身体障害者認定が受けられないと言う事はありません。
不誠実な自動車保険会社の担当が、症状固定や示談の早期化を狙って、このようなことを言うことがありますが、事実ではありませんので応じる必要はありません。
各種手続きに効力を発揮!
遷延性意識障害となった場合に困るのが、患者名義でないとできない契約や手続き関係です。
遷延性意識障害となった場合には、成年後見制度を利用して配偶者や子供などが代理で手続きできるのですが、本人確認の規約が緩やかな所では、身体障害認定が確認できるもの、つまり障害者手帳で事足りることもあります。
そのため、診断書の提出が必要と言われても、障害者手帳の提示だけで済むこともあり、診断書を発行してもらう手間や費用などを考えると、ずいぶんと便利であるのが分かります。
また、遷延性意識障害となられた方が生命保険に入っていた場合には、死亡・高度障害保険金の支払い要件に該当するため、手続きをすれば保険金を受け取れます。
保険の正式な手続きには診断書などが必要となりますが、先に加入保険会社と話をする際に遷延性意識障害で身体障害認定1級を受けている旨を伝えれば、遅滞なく手続きを進めてもらえます。
このように身体障害者認定にはたくさんの利点があるため、医師と相談の上なるべく早く申請をした方が良いでしょう。
しかし、病院や医師によっては身体障害者認定の仕組みについて詳しくなく、反対に先延ばしを提案されることもありますので、そのような場合には弁護士に相談をして申請を進めた方が良いでしょう。
「遷延性意識障害による身体障害者認定」に関してのみんなの質問
4カ月前に妻が交通事故に遭い、遷延性意識障害の正式な診断が先日されました。
そのため、身体障害者認定を受けようと思うのですが、「半年経ってからした方が良い」「認定されるといろいろと補助もあるので、すぐにした方が良い」との意見があり、申請を急いでするか悩んでいます。
遷延性意識障害の場合、どのタイミングで身体障害者認定の手続きをすると良いでしょうか?
遷延性意識障害の認定には、日本脳神経外科学会が定義する状態が3カ月以上続くことが条件となっています。
交通事故から4カ月で遷延性意識障害との診断は、通常だと言えます。
一方身体障害者の認定の条件の一つに、「後遺症となる状態が6カ月以上続いている」というものがあります。
しかし、この条件は弾力的なものであって、遷延性意識障害のような重篤な患者に対しては認定されることの方が多いです。
身体障害者と認定されると、医療費や税金面でも優遇措置がありますので、早めにして問題はないでしょう。
1年前に息子が交通事故に遭い、遷延性意識障害となったのですが、未だに入院中で治療費は加害者が加入していた保険会社から支払われています。
先日、身体障害者1級を取得したのですが、それ以降保険会社の方から「身体障害者認定をしたのであれば、症状固定してください」と繰り返し言われるようになりました。
身体障害者認定を受けてしまうと、必ず症状固定しなければいけないのでしょうか?
国が認定する身体障害者認定と、交通事故での症状固定及び後遺障害認定は別物であるため、両方を同時期にしなければいけないということはありません。
そのため、医師から症状固定を勧められない限りは、現状でも良いと言えます。
しかし、保険会社から支払われる治療費では自由診療が受けづらいため、症状固定をして保険金を受けとり、その保険金で自由診療を受けるという選択肢もあります。
タイミングの善し悪しは患者の事情によりますので、弁護士に相談をした方が良いかもしれません。
息子が交通事故で遷延性意識障害となり、身体障害者1級の認定を受けました。
治療をしてくれている医師からは、息子の年齢が若いこともあり、遷延性意識障害から回復する可能性がないわけではないと言われました。
もし、息子が遷延性意識障害から回復した場合、身体障害者の認定は取り消されるのでしょうか?
また、交通事故で保険会社から遷延性意識障害での保険金を受け取っていた場合、返還しなければいけないのでしょうか?
身体障害者認定は、障害が改善した場合には等級の格下げや、身体障害者の認定取り消しがあり得ます。
ですが、保険会社との示談が済んで保険金を受け取っている場合には、保険金の返還をする必要はありません。
示談の時点では遷延性意識障害であると保険会社も認めているため、その後劇的に回復したり、残念ながら早期に亡くなられたとしても、示談の時点で予想できないためです。
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交通事故により遷延性意識障害となった場合の示談の時効は、交通事故後3年ではなく症状固定後3年になるため、時効を気にして無理に症状固定をする必要はない。
自動車事故対策機構(NASVA)は、遷延性意識障害などの交通事故被害者の援護をする独立行政法人で、療養センターの入所や介護料の支給などの支援をしている。
遷延性意識障害の場合、障害年金の申請要件が一部緩和されるが、交通事故が原因の場合、支給に関して一部規制がかかることがある。
遷延性意識障害の症状固定は、莫大な治療費の問題と絡んでいるので、弁護士と相談の上、慎重に決めた方が良い。
交通事故で遷延性意識障害となった場合、障害年金の受給要件を満たせば障害年金が支給されるが、示談金と相殺されるため、弁護士に相談の上手続きをした方が良い。