遷延性意識障害から回復した場合、手続きは必要?
遷延性意識障害は、
1.自力移動が不可能である。
2.自力摂食が不可能である。
3.大便・尿失禁がある。
4.眼球は動いても、動く指先を目で追うなどの認識をすることは出来ない。
5.声を出しても、意味のある発言は全く不可能である。
6.「まぶたを閉じて」などの簡単な命令には辛うじてすることもあるが、ほとんど意思疎通は不可能である。
という6つの状態が3カ月以上続いていると、遷延性意識障害と診断されます。
反対にいえばどれか一つでも当てはまらない場合には、遷延性意識障害とは認められないということになります。
遷延性意識障害から回復した場合は
もし、交通事故後遷延性意識障害と診断された後で、どれか1項目でも当てはまらくなったらどうなるのでしょうか?
特に、4・5・6に関しては家族のケアなどで回復した事例もあるため、後遺障害認定後に回復ということもあり得ます。
遷延性意識障害からの回復は家族からすれば喜ばしいことですが、同時に不安や疑問も出てくるかと思います。
「後遺障害介護1級と身体障害者1級と認められているが取り消されるのではないか?」、「保険会社と遷延性意識障害として示談が済んでいるが、保険金の返還を迫られるのではないだろうか?」
と、現在受けている認定の取り消しや保険金の返還が気になると思います。
後遺障害介護1級と身体障害者1級の取り消しに関してですが、ほとんどの場合で現状のまま認定となります。
なぜならば、先程の項目の4・5・6が改善して意思疎通ができたとしても、1・2・3の身体機能の項目が改善しない限り要介護の状態であることは変わらないからです。
病名は「遷延性意識障害」から「脳損傷による全身麻痺」とは変わりますが、後遺障害介護1級と身体障害者1級の基準はクリアしているといえるからです。
また、保険会社の保険金については、示談の場合に遷延性意識障害で症状固定されていたのならば、返金する必要はありません。
示談の時点で保険会社が「遷延性意識障害から回復が不可能」と認めているのですから、後に奇跡的に回復したとしても保険会社が異議を言うことはできません。
反対に遷延性意識障害の症状が重くなり、治療費が示談時に計算した金額を上回っても、保険会社が追加して支払うことはないので、示談に関しては保険会社・患者双方に同じだけのリスクがあることがわかります。
そのため、遷延性意識障害から回復したからといって、直ちに取らなければいけない公的な手続きはほとんどなく、しいて言えば身体障害認定の事由変更をする必要がある可能性もあるので、医師や自治体に相談をしてみると良いでしょう。
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交通事故による遷延性意識障害で症状固定する場合、症状固定後は治療費が支払われなくなることもあるので、示談中も治療費を支払ってもらえるように保険会社に交渉しておく方が良い。
交通事故により遷延性意識障害となった場合の示談の時効は、交通事故後3年ではなく症状固定後3年になるため、時効を気にして無理に症状固定をする必要はない。
遷延性意識障害の症状固定は、莫大な治療費の問題と絡んでいるので、弁護士と相談の上、慎重に決めた方が良い。
遷延性意識障害患者は、症状固定をすると和解や判決で賠償金が決定するまで立て替え払いが増えるので、症状固定の時期を慎重に決めなくてはならない。
交通事故で遷延性意識障害となった場合、被害者と被害者の看護をする家族の補償を優先した示談がなされるべきなので、身内からの示談交渉への干渉がひどい場合には弁護士に依頼するとよい。