遷延性意識障害の争点 余命と生活費控除について
交通事故による遷延性意識障害の保険金の算出で、大きな争点となるのが余命と生活費控除です。
余命は交通事故で遷延性意識障害となった後に、どれだけ生きられるかと言う事になります。
もし、40歳男性が遷延性意識障害となった場合は、厚生労働省が発表している簡易生命表から計算すると、81歳と約40年の余命があります。
交通事故の損害補償金額を計算する際には、「被害者が80歳まで生きていたら、残りの40年でこれだけの収入を得ていただろう」と言う条件で計算されるのですが、損害保険会社は「遷延性意識障害の患者の平均余命は10年です」との主張を平気でしてきます。
損害保険会社からすれば保険金を支払いたくないための、詭弁ともいえる主張なのですが、遷延性意識障害に疎い家族は「そんなものなのかな?」と、本来受け取れるはずの保険金額の3分の1、人によってはそれ以下の金額で示談をしてしまうことがあるのです。
裁判所の判例でも遷延性意識障害患者の余命は、簡易生命表通りの計算とされるものが主流で、保険会社の主張が正しくないことが分かります。
そのため、遷延性意識障害の患者の余命を不当に短く言ってくる保険会社は、それだけで誠実ではないと言う事が分かります。
見解が分かれる生活費控除
交通事故の保険金の算出時に使われる生活費控除とは、「被害者が生きていた場合に必要であったであろう被害者の生活費は、差し引いて保険金を算出する」と言う事です。
たとえば、夫婦・子供一人で生活費が20万円の家庭があったとして、夫が交通事故で死亡したとします。
普通ならば毎月20万円の計算で補償がされると思われますが、そうではありません。
夫の食費や衣服費・通信費・交通費などは、亡くなったため必要ではないとされ、生活費控除が5万円と認められると、毎月15万円で計算されます。
主に死亡事故で用いられる生活費控除なのですが、遷延性意識障害の患者に対しても生活費控除を用いる保険会社もあります。
保険会社の主張は、「患者は寝たきりであり、食事の流動食は医療費で賄われているため、ほぼ通常の生活費は発生しない。」となっています。
裁判所の判例も、全額ではないにしろ生活費控除を認めたものから、生活費控除を全く認めず被害者に有利な判決のものまで様々です。
最近の傾向として交通事故被害者に有利な判例がおりることが多いのですが、裁判での主張が左右すると言っても過言ではないので、交通事故に強い弁護士のバックアップは不可欠と言えます。
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遷延性意識障害における逸失利益を算出するにあたって、被害者の余命年数や生活費が問題として取り上げられやすい。場合によっては生活費が控除されるなど、賠償金が安くなる可能性がある。
交通事故の示談交渉で保険会社から遷延性意識障害患者の余命は10年ほどとの主張がなされる時があるが、裁判所は平均余命を採用している。
遷延性意識障害による損害を考えるうえで、平均余命の決定は避けられない。平均余命は賠償金の支払いを一時金賠償とするか定期金賠償とするかのメリット・デメリットにも影響し、慎重に検討する必要がある。
交通事故による遷延性意識障害の場合、保険会社に請求できるものが多いため、請求漏れがないように弁護士に依頼して示談金を計算してもらうと良い。
遷延性意識障害の遅延損害金は時として多額となることがあるが、計算が複雑な場合もあるので、専門家である弁護士に試算してもらうと良い。