遷延性意識障害で保険会社に請求できるものは?
交通事故で遷延性意識障害となった場合、症状固定するまでは治療費などは保険会社が支払ってくれるので良いのですが、症状固定をして示談をしてしまうと、以後の介護にかかる費用を保険金ですべて賄わなければいけません。
遷延性意識障害の患者家族の中には、保険会社に請求する権利があるにもかかわらず、請求しないまま示談をしてしまい、後の介護費用が足りなくなり、困ると言うことがあります。
弁護士に依頼して示談金額を計算してもらえば、請求漏れの可能性は低くなり、示談金額の増額となります。
しかし、「弁護士に依頼してまで、示談金の計算をしてもらうのは気が引ける」と言った場合には、「保険金の請求できるもの」を知っているだけで、ある程度自分でチェックすることができます。
介護に関するものはとことん請求するつもりで
遷延性意識障害の患者の介護は、24時間365日必要と考えた方が良いです。
そのため、介護に関して保険会社に請求できるものは広範囲に及びます。
1つは、介護のための自宅改装費です。
ただ単に改装してしまうと認められないことも多いため、病院の理学療法士などに改装のアドバイスを受けて、出来れば医療関係者の監修をうけて設計した証明をとった上で改装工事をすると良いです。
2つ目は介護器具の購入です。
介護ベッドやベッドからの移動用リフト・除痰器などで、福祉車両の購入もこの項目に含まれます。
また、おむつや清拭用の使い捨てウエットティッシュなどの雑費も、「生活雑費」として認められます。
3つ目が介護費用です。
介護するのが親や子など血縁関係の者であっても、介護費用を請求できます。
また、ヘルパーなどの職業介護人を雇う費用も、状況により認められます。
そのため、「子が介護するから介護費用を支払わない」との保険会社の主張が裁判では認められず、血縁者の介護であっても介護費用の支払いを命じる判決がほとんどです。
4つ目が慰謝料です。
遷延性意識障害患者本人に対する慰謝料はもちろんのこと、配偶者・子・親に対しても慰謝料が認められることがあります。
遷延性意識障害患者本人に対しては、傷害慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類の慰謝料を受け取ることができます。
5つ目が逸失利益の請求です。
分かりやすく言うと、会社員なら給料と同等の将来的な保障をしてもらうということになります。
単純な計算だと、年収500万で定年退職まで20年であれば、1億円と言うことになります。
(実際にはライプニッツ係数や生活控除・平均余命により大きく変わります。)
ですが、専業主婦など収入がない場合には、保険会社は逸失利益を認めないことがあります。
しかし、裁判では専業主婦でも逸失利益を認めることがほとんどですので、大きく示談金が変わる可能性があります。
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遷延性意識障害患者の家族が就業しており、家族での介護が難しい場合でも職業介護士を雇って介護することは可能であるため、示談時に将来的な介護費用を請求するとよい。
遷延性意識障害の保険金の算出の際には、余命と生活費控除が争点となる事が多く、保険会社の主張は被害者に対して圧倒的な不利となる事が多い。
最低限の賠償を補償するのが自賠責保険、不足分を補填するのが任意保険である。示談成立に時間がかかる遷延性意識障害では、被害者請求を利用しながら両保険金の受取法を選択すると良い。
交通事故の示談交渉で保険会社から遷延性意識障害患者の余命は10年ほどとの主張がなされる時があるが、裁判所は平均余命を採用している。
遷延性意識障害の遅延損害金は時として多額となることがあるが、計算が複雑な場合もあるので、専門家である弁護士に試算してもらうと良い。