遷延性意識障害における遅延損害金の発生について
弁護士に遷延性意識障害の損害賠償請求を依頼した場合、交通事故による損害賠償金の試算が行われます。
遷延性意識障害の損害賠償請求の項目は、治療費や休業補償、逸失利益、介護費用など多岐にわたるのですが、保険会社が提示してきた示談書の中の損害賠償項目にはなくて、弁護士が作成した損害賠償請求項目にはあるものが2項目あります。
1つは弁護士費用で、裁判となって勝訴した場合にはある一定割合までを弁護士費用として相手方に請求することを、裁判所も認めています。
もう1つが、遅延損害金です。
遅延損害金は日常のニュースなどでもちらほらと見かける機会があると思いますが、支払いが遅れたことによる損害を差し、交通事故では損害賠償金の支払いが遅れたことによる損害金の事を差します。
遅延損害金は事故日から発生する
遅延損害金は示談金が確定してから支払われるまでの間ではなく、実は交通事故日から発生しています。
つまり、交通事故から2年経って症状固定し、1年後に裁判で判決が出て、半年後に支払ったというようなケースでは、3年半分の遅延損害金が通常の損害賠償金とは別に発生していることになります。
遅延損害金の法的な利率は年5%であるため、遷延性意識障害で損害賠償金額が莫大なケースでは、遅延損害金だけで何百万円となることも少なくありません。
例えば、遷延性意識障害の損害賠償金が1億円として、交通事故から3年半後に払われた場合、
1億円×5%×3.5年=1750万円
が、遅延損害金となります。
しかし、実際にはさらに計算が複雑になります。
遷延性意識障害の場合、一時金として損害賠償金を先渡ししているケースが多く、さらに何度か一時金を渡しているような場合には一時金を渡した時期により、遅延損害金が変わってきます。
他にも、自賠責保険分を被害者請求して先取りしていた場合には、自賠責保険が支払われるまでの自賠責保険金額分の遅延損害金を請求することが出来ます。
先程の例で、交通事故から1年半後に自賠責保険から4000万円を受け取っていた場合には、
4000万円×5%×1.5=300万円(自賠責分)
6000万円×5%×3.5=1050万円(保険会社分)
300万円+1050万円=1350万円
が、遅延損害金となります。
遅延損害金を計算するには、一時金の支払いや自賠責保険の資料を確認の上、計算を行わなければ正確には出ませんので、専門家である弁護士に任せるのが一番となります。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
交通事故の示談交渉で保険会社から遷延性意識障害患者の余命は10年ほどとの主張がなされる時があるが、裁判所は平均余命を採用している。
18歳~64歳の遷延性意識障害患者は、介護保険等の公的な支援が受けられず、手当てが少なくなるため、加害者側に十分な介護費用を請求する必要性がある。
交通事故で遷延性意識障害になった場合、保険会社は遷延性意識障害患者の余命を平均余命より短く計算して賠償金額を計算するので争点になりやすい。
交通事故による遷延性意識障害の場合、保険会社に請求できるものが多いため、請求漏れがないように弁護士に依頼して示談金を計算してもらうと良い。
交通事故により負った遷延性意識障害の示談をする場合、将来的な介護も考えて交渉しなければいけないので、弁護士に相談をして示談交渉を進めるとよい。