遷延性意識障害による賠償金を定期金賠償で受け取るリスク
定期金賠償とは、賠償金を一括で払わずに定期的に分割払いで支払うことです。
遷延性意識障害は後遺障害等級1級ですから、賠償金は高額になります。
自賠責保険は定期金賠償など申し出ることなく一括で保険金を支払いますが、加害者側の任意自動車保険会社は、高額な保険金をまとめて払うよりは分割払いの方が会社の利益になると考えます。
定期金賠償を提案してくるのは、一部の保険会社のみです。
遷延性意識障害の賠償金を一括払いで受け取るか、分割払いで受け取るかは、悩ましい問題です。
まとまった現金資産があれば、投資してお金を増やせるかもしれないと思う人もいるかもしれません。
その一方では、分割払いならお金を使い過ぎて家計が苦しくなったりしないので安心だと思う人もいるかもしれません。
どちらが得かを判断するために、被害者に支払われる金額の総額で考えてみましょう。
定期金賠償は得をする?損をする?
遷延性意識障害の賠償金が一括で支払われる場合、賠償金のうち、逸失利益は中間利息が控除されます。
全期間分の補償をおこなった場合、受け取った逸失利益は、運用によって将来は実際の補償額を上回るので、将来の利息によって生じる増額分を控除することを「中間利息の控除」と言います。
逸失利益を全期間一括して支払われる場合、5%の利息を控除すると法律で定められています。
低金利時代の今、5%も控除されるのはなぜかと不満を抱く人もいるでしょうが、これは民法で定められている利率なので、法律が改定されない限り、中間利息の計算に用いる利率は5%です。
定期金賠償で賠償金を受け取れば、中間利息が控除されず、実際に受け取るお金の総額が、一括で受け取った時より多くなります。
しかし、保険会社といえども企業なので倒産する可能性があります。
遷延性意識障害患者の年齢が若ければ、定期金賠償は数十年に及びますが、定期金賠償を支払う保険会社が数十年後も安泰かどうかはわかりません。
もし保険会社が倒産したら、賠償金を受け取れなくなってしまいます。
さらに、定期金賠償の支払いによって保険会社との関係が将来にわたって続き、被害者家族に交通事故のことを思い出させていつまでも加害者との関係が絶ち切れないことがつらい気持ちを増幅させるかもしれません。
加害者側が定期金賠償を主張してきた場合に拒否したい場合は、十分な根拠を示した反論が求められるので、弁護士にご相談ください。
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遷延性意識障害における逸失利益を算出するにあたって、被害者の余命年数や生活費が問題として取り上げられやすい。場合によっては生活費が控除されるなど、賠償金が安くなる可能性がある。
交通事故により遷延性意識障害となった場合には逸失利益が認められることが多いが、不労所得や年金に対しては逸失利益が認められないため注意が必要である。
交通事故に遭い遷延性意識障害となった場合に賠償金を分割で受け取る定期金賠償は、逸失利益で中間利息を控除しないので賠償金の総額が増える。
交通事故で遷延性意識障害になった場合、保険会社は遷延性意識障害患者の余命を平均余命より短く計算して賠償金額を計算するので争点になりやすい。
被害者が遷延性意識障害となった交通事故の示談では、生活費控除、在宅介護の蓋然性、余命制限、定期金賠償の4つが代表的な争点となる。保険会社の主張に対する反論の準備が必要。