遷延性意識障害患者の中には、最小意識状態の患者も…?
遷延性意識障害患者の脳は生きています。
その証拠として、脳死の人の脳波は平たんですが、遷延性意識障害の人の脳波は、徐波化(じょはか)していますが平坦ではありません。
脳が活発に活動すると、脳波は周波数の高い波が多くなります。
これを速波化と言います。
一方、脳の活動が低下すると周波数の低い波が多くなります。
これが脳波の徐波化です。
健康な人が深い眠りに入ると、大きくゆるやかなカーブを描く脳波が現れ、これを徐波睡眠と言いますが、遷延性意識障害患者の脳波における徐波化は、徐波睡眠の脳波とは異なります。
いずれにしても、遷延性意識障害を発症した人の脳は、活動量が極端に少ないものの、低いレベルで活動を継続しているのです。
他にも、遷延性意識障害患者の脳が生きている証拠があります。
例えば、脳死の人は自発呼吸ができませんし、睡眠と覚醒(起きていること)の区別がありません。
遷延性意識障害患者は、自分で呼吸ができますし、眠りと目覚めのサイクルがあるものの、目が覚めていている間も意識のない覚醒状態が続きます。
この容体が「植物状態」です。
ここでいう植物状態の植物は意識レベルがゼロという意味で用いられています。
たしかに、植物は自分で移動することはできず会話による意思の疎通もできません。
それなら遷延性意識障害イコール植物状態でしょうか?
答えはNOです。
なぜなら、まったく意識がないのか、意識が多少あるものの、それを伝えることができないのか判断がむずかしいからです。
このことから、遷延性意識障害患者のなかには、植物状態ではなく「最小意識状態」にある人もいると考えられています。
最小意識状態とは?
前述のとおり、植物状態の人の意識はゼロですが、最小意識状態の人は極めて限られた範囲ですが、感覚や思考があると考えられています。
たとえば、痛みや不快を感じれば、その人は植物状態ではなく、最小意識状態にあるわけです。
しかし、その感覚を周囲に伝えることができず、脈拍が上がる、発汗するなどの現象を通じて単なる体調の変化と捉えられてしまう可能性があります。
遷延性意識障害患者の家族にとって、植物状態を脱し、最小意識状態といえども意識が多少なりとも戻ればうれしい限りですが、植物状態と最小意識状態の区別は非常にむずかしいとされています。
遷延性意識障害すなわち植物状態と思われていた人が、実は非常にかすかではあるが最小意識状態だったため、治療を受けて意識レベルが上がっていくというケースがあります。
遷延性意識障害と診断されたが、実は最小意識状態で、あなたに何かを訴えようとしている可能性もあるのです。
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遷延性意識障害患者を自宅介護する場合には、定期的な受診が必要になってくるが、適切な受診が受けられないこともあるので、退院前に介護計画を念入りに立てる必要がある。
遷延性意識障害となった場合、救急搬送された病院にまずは入院することとなるが、3カ月経つと転院を余儀なくされる。
遷延性意識障害のケアは、食事や投薬の管理のほか、体位変換、排泄のお世話や体の清拭、口腔内の洗浄など、医療的なものから一般的なものまで多くの種類がある。
遷延性意識障害の治療法には、電気的な刺激を脳に与えるものがあり、脊髄後索電気刺激が代表的なものである。
遷延性意識障害患者が長期入院するには、医療制度から難しい面があるが、長期入院を実施している医療療養型病院もわずかながらにある。