医学的にみる遷延性意識障害の原因とは
遷延性意識障害に対してあまり知識がない人から、「交通事故で頭を打ったのならば、ひょっこり意識を取り戻すんじゃないのか?」と言われることがあります。
ドラマのような劇的な回復は無いとは言えませんが、限りなく確率は低いと言えます。
交通事故に遭ったとはいえ、健常者が遷延性意識障害となるには、医学的にみればいくつかの理由があります。
遷延性意識障害は、
1.自力移動が不可能である。
2.自力摂食が不可能である。
3.大便・尿失禁がある。
4.眼球は動いても、動く指先を目で追うなどの認識をすることは出来ない。
5.声を出しても、意味のある発言は全く不可能である。
6.「まぶたを閉じて」などの簡単な命令には辛うじて応じることもあるが、ほとんど意思疎通は不可能である。
という状態が、治療をしても3カ月以上続いている患者のことを指します。
つまり、これらの状態が続いているのであれば遷延性意識障害と認められ、遷延性意識障害となる原因は複数あることになります。
脳のダメージが主原因
遷延性意識障害は、主に脳にダメージが加わることが原因です。
一言に脳にダメージと言っても、これもまたいくつか原因があります。
1つが、低酸素によるものです。
低酸素になる状況は「水に溺れた」「一酸化炭素中毒」などがありますが、脳梗塞などで血管が切れたり詰まったりして、脳に血液がいきわたらなかったことも含まれます。
つまり、酸素が足りず脳細胞が死滅してしまった状態です。
2つ目が、衝撃による脳の損傷です。
脳は、髄液で満たされた頭蓋骨の中に浮いている状態です。
しかし、大きな衝撃が加わると脳が頭蓋骨に衝突してしまい、その部分が壊死してしまうことがあります。
また、頭蓋骨を骨折し、折れた骨が脳を傷つけることにより遷延性意識障害となるケースもあります。
3つ目が、脳浮腫です。
脳浮腫とは頭蓋骨内の脳の中の圧力が上がり、脳が圧迫されることです。
脳に衝撃が加わったことで髄液の量が異常に増えたり、くも膜下出血など脳内で出血したりすることが原因です。
脳内の水圧を「脳圧」と言うのですが、脳圧が高い状態が続くと脳細胞が水分を吸ってしまい、最悪細胞が膨れすぎて壊れることになります。
近年、大人になっても脳の神経細胞は増やすことができると言われていますが、脳細胞は再生不可能だと言われています。
そのため、脳細胞にダメージを負って遷延性意識障害となった場合、回復が難しいと言わざるを得ない状態なのです。
この記事を読まれた方にオススメの情報5選
遷延性意識障害の意識の回復は、目線や小さな変化により気づくことが多いので、介護人は観察力が必要となる。
聴覚は五感の中で最後まで遷延性意識障害患者が認識できる器官と言われているため、音楽や声などを患者に聞かせることにより、脳を刺激して活発化させると考えられている。
遷延性意識障害と閉じ込め症候群の違いは、本人の意識があるかないかだけとなるので、医師でも診断を誤ることがある。
遷延性意識障害は、主に知覚や意識を司る大脳が交通事故などにより損傷することでこん睡状態となった状態を指す。
遷延性意識障害患者の中には、人工呼吸器が必要となる人もいる。人工呼吸器が必要な遷延性意識障害患者の自宅介護は、かなり重篤なレベルとなるので、それを踏まえて家族は検討する必要がある。