遷延性意識障害で症状固定する際の治療費に関する注意点
交通事故における症状固定とは、「これ以上治療を続けても、交通事故で負った怪我や症状が良くなることはないので、症状固定日の症状を基準として、その時の症状を後遺症として認め、後遺障害慰謝料などの将来的な損害賠償金額を決める」ということになります。
遷延性意識障害は、3カ月間、遷延性意識障害の条件に該当し続けると、「遷延性意識障害」と診断を下すことができます。
一般的に遷延性意識障害の場合、劇的な回復というのは皆無に等しく、良くても高機能脳障害レベルまでの回復ということがほとんどです。
交通事故の被害者である場合には、遷延性意識障害の治療費は加害者もしくは加害者の保険会社が負担していることがほとんどなのですが、症状固定をした後は自費、つまり患者もしくは患者家族が支払わなければいけないことになります。
これは、遷延性意識障害の患者に限らず、交通事故の場合、症状固定後は自費となる代わりに、示談で将来的な治療費や後遺障害慰謝料という形で、金銭を受け取ることになります。
医療費の支払いを途切れさせない
ここで問題となるのが、症状固定をした後の治療費の問題です。
遷延性意識障害患者の多くは、病院などの医療機関に長期入院をしているため、毎日治療費が発生している状態とも言えます。
そのため症状固定をした後の示談交渉が長引いて、治療費の支払いで家計が圧迫されるということがあり得ます。
中には早く示談金が欲しいがために、弁護士から請求した場合から考えると、半分以下の保険金で示談をしてしまい、将来的に困るということもあります。
一時金や仮払金をしてもらい、治療費にあてるという方法もありますが、毎月数十万円単位で発生する治療費に対して追いつかないということもあり得ます。
そのため症状固定をする際に、「示談交渉が終わり、示談金が振り込まれるまでの間の、遷延性意識障害に対する治療費に関しては、症状固定後も保険会社が支払う」というのを条件に、保険会社に症状固定することを言ってみる方が良いでしょう。
そうすることにより、最低でも遷延性意識障害患者の治療費は心配がなくなりますし、家族の生活費に関して貯金が十分にあったり、家族内に収入がある者がいたりするのであれば、落ち着いて示談交渉することができます。
症状固定後に治療費の負担を保険会社にお願いしても、保険会社としては示談交渉の早期終了の切り札ともなるため、治療費の負担をすることはほとんどありません。
そのため、症状固定をする際には、示談交渉を見据えてする必要があります。
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遷延性意識障害の症状固定は、莫大な治療費の問題と絡んでいるので、弁護士と相談の上、慎重に決めた方が良い。
交通事故により遷延性意識障害となった場合の示談の時効は、交通事故後3年ではなく症状固定後3年になるため、時効を気にして無理に症状固定をする必要はない。
症状固定後は加害者に治療費は請求できないが、遷延性意識障害の場合、将来的な治療費や介護費を示談時に請求することができるため、弁護士に相談するのが望ましい。
遷延性意識障害の被害者が、交通事故の示談成立前に死亡した場合、示談内容はいったんリセットされる。交通事故との因果関係を確認しながら、改めて損害内容を確認、手続きを行う。
交通事故で遷延性意識障害を負った場合に、自宅介護を選択すればさまざまなケアが必要になる。また、保険会社との交渉のために弁護士に依頼するのが適切である。