遷延性意識障害患者の逸失利益の計算方法について
交通事故で遷延性意識障害となった被害者の性別や年齢・職業は様々ですが、特に患者家族が困るのが「遷延性意識障害患者が家計の主たる収入者」であった場合です。
「夫が会社員、妻が専業主婦の家庭で、夫が交通事故で遷延性意識障害となった」というケースでは、ある意味将来にわたって収入がなくなるのは確定的であるため、交通事故発生時から経済的な危機に見舞われるということもあります。
そのため、遷延性意識障害となった場合には、逸失利益が問題となってきます。
交通事故における逸失利益とは、被害者の将来的な給与や収入を差します。
遷延性意識障害の場合、患者自身が働くことは不可能であるため、労働能力喪失率(労働するための能力がどれだけ失われたか、すなわち給料がどれだけ減額されるかの割合)は100%になります。
ですので、年収500万円であったのならば、500万円に平均余命からの就業可能年数をかけたものが逸失利益の総額になり、実際に支払われる金額はその金額にホフマン係数をかけたものになります。
1つの例ですと、遷延性意識障害患者の年収が500万円で就業可能年数が20年とすれば、1億円の給料が逸失利益となりますが実際に支払われるのは、毎年500万円ずつ使ったと想定して、残りのお金は中間利息5%の複利計算で増えていくという計算(ホフマン係数)に基づきます。
そのため、6808万円が実際の逸失利益として保険会社から支払われます。
逸失利益での争点
こうしてみると、遷延性意識障害患者の逸失利益に関しては、給与所得者など収入が安定している場合には争点がないように思えますが、実際には違います。
交通事故でも死亡事故の場合には、生活費控除というものがあります。
生活費控除とは、「死亡事故で亡くなった本人のための生活費に当たるもので、亡くなった場合には必要がなくなるため、その分を逸失利益から差し引く」というもので、一般的には30%程度となることが多いです。
保険会社はこの理屈を遷延性意識障害患者にも当てはめて、生活費控除を差し引いた金額を提示することがあります。
先程の6808万円では、約2042万円が生活費控除として引かれてしまう計算になりますので、患者家族が受け取れる金額が大幅に減ってしまうことになります。
しかしながら、判例を見ると保険会社が主張する生活費控除を認めないか、生活費控除を認めても10%や5%といった低い数字で計算するものが多数を占めています。
もし、保険会社がそのような主張をしてきた場合には、弁護士から抗弁をしてもらう方が良いでしょう。
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交通事故により遷延性意識障害となった場合には逸失利益が認められることが多いが、不労所得や年金に対しては逸失利益が認められないため注意が必要である。
遷延性意識障害の遅延損害金は時として多額となることがあるが、計算が複雑な場合もあるので、専門家である弁護士に試算してもらうと良い。
交通事故の示談中に遷延性意識障害の被害者が死亡しても損害賠償請求できるが、将来的な介護費などの部分は請求できなくなる。
フリーターなど収入が低い人が遷延性意識障害となった場合、保険会社は逸失利益を低く計算するが、裁判では賃金センサスを使用した計算になるため、大幅な金額増となる事がある。