遷延性意識障害患者が示談前に死亡した場合の保険金は?
交通事故で遷延性意識障害となり、症状固定後に容体が急変して、示談前に患者が死亡するというケースもあります。
示談交渉がもめて裁判となった場合には、1年以上かかるといったケースも多くあり、場合によっては3年・5年とかかるケースもあります。
そのため、交通事故による遷延性意識障害とは別の原因で、患者が死亡することがあります。
「遷延性意識障害とはいえ、高齢者ではない患者であれば、別の原因で亡くなることは少ないのでは?」と思うかもしれませんが、インフルエンザ等、感染症にかかる可能性は常にありますし、近年では院内感染による肺炎などもあったりするため、ある意味、健常者よりは感染症のリスクが高いとも言えます。
また、寝たきりによる内臓器の働きが低下し、内臓器不全が発症する可能性も否定できず、本人が「おなかが痛い」「熱がある」などの意思表示ができない分、日ごろの健康管理に注意をしていても発見が遅れるということもあります。
示談前に死亡した場合には、将来的な治療費は支払われない
万が一、示談前に遷延性意識障害の患者が亡くなった場合には、保険金の支払いはどうなるかというと、もともと遷延性意識障害の患者本人が保険金請求の権利を有していたため、患者の法定相続人に保険金の請求権が発生します。
しかし、保険金は死亡以前の保険金額の支払いがされるかというと、そうではありません。
遷延性意識障害による保険金の支払い内訳は、治療費・介護費・逸失利益・後遺障害慰謝料・自宅介護の場合は自宅改装費用などがあります。
判例によると、逸失利益・後遺障害慰謝料は死亡による減額はないことが多いのですが、治療費や介護費・自宅改装費などの、「将来的な費用」に関するものは支払われないことが多いです。
交通事故で遷延性意識障害となった時から死亡した時までの治療費や介護費用は支払われますが、死亡以後に予定していた治療や介護に対する費用は支払われないことがほとんどです。
また、自宅改装費などで死亡時にすでに改装済み、改装のための前金を支払っている場合、実費分に関して保険会社の損害賠償の対象となりますが、それ以外の物に関しては損害賠償の対象外となることが多いです。
裁判所の考えとしては、「交通事故で発生した被害者本人にかかる損害賠償に対しては、被害者が死亡しても請求権がそのまま継続するが、治療費などは本人の死亡により必要なくなっているので、加害者にそこまで請求するのは過分の請求である」とのことから、「将来的な費用」に関するものは支払われないのです。
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遷延性意識障害の症状固定は、莫大な治療費の問題と絡んでいるので、弁護士と相談の上、慎重に決めた方が良い。
遷延性意識障害患者の在宅介護を保険会社や裁判所に認めさせるためには、無理のない在宅介護のプランを立てる必要がある。
交通事故により遷延性意識障害となった場合の示談の時効は、交通事故後3年ではなく症状固定後3年になるため、時効を気にして無理に症状固定をする必要はない。
症状固定後は加害者に治療費は請求できないが、遷延性意識障害の場合、将来的な治療費や介護費を示談時に請求することができるため、弁護士に相談するのが望ましい。
交通事故の被害者が遷延性意識障害の場合、将来の治療費が莫大である事と、加害者側の一方的な主張が通り、被害者側が不利になる事が多いので、弁護士への相談は必須ともいえる。