交通事故の遷延性意識障害の治療に健康保険は使えるの?
「交通事故では健康保険は使えない。」という話を聞いたことはないでしょうか?
実際交通事故に遭った方で、病院から「交通事故なので健康保険は使えません。」と言われた方もいると思います。
実は交通事故であっても、健康保険を使うことができます。
本当ならば交通事故による怪我の治療代は加害者がすべて負担するべきなのですが、一旦健康保険組合や被害者本人が負担をし、後に加害者に請求することができるのです。
交通事故による怪我や遷延性意識障害でも、加入している健康保険組合に「第三者行為による傷病届」などの必要書類を提出すれば、健康保険を利用することができます。
交通事故の場合は、加害者側の保険会社や自己加入の保険会社から治療費が直接支払われることが多いのですが、加害者が無保険車で自身も保険に加入していなかったり、自身の全面的な過失の場合には保険会社から補償金が支払われないので、健康保険を利用して治療した方が経済的な負担が減るケースもあります。
遷延性意識障害の場合は治療費が莫大な金額となる事が予想されるため、健康保険を利用して3割負担となっても金銭的な負担が大きくのしかかることになります。
高額療養費制度を利用しよう
そこで合わせて手続きをしたいのが、高額療養費制度です。
高額療養費制度は、収入に応じて月額一定以上の医療費を支払った場合、その上限分が還付される制度です。
標準月額報酬が26万円以下の場合は57,600円が上限となるため、1カ月の入院費が100万円になっても57,600円を引いた942,400円を返してもらえます。
しかし、還付されるのは高額療養費の申請をして3か月後となるので、家計の大黒柱である夫が遷延性意識障害となった場合、収入がなくなった上に入院費まで一時的に負担するのは大変です。
そのため、さらに利用をしたいのが、限度額適用認定です。
高額療養費制度は「支払った医療費の還付」ですが、限度額適用認定は「高額な支払いになるであろうと予想されるので、事前に申請をしておけば限度額までの自己負担で済む」と言う制度です。
つまり、先に限度額適用認定をしておけば、1カ月の医療費が高額になったとしても、先の事例ならば上限の57,600円を超えて支払う必要はありません。
ですが、注意をしたいのが、食事代や差額ベッド代、保険適用外の治療や医薬品に対しては適用外になるので、場合によっては限度額適用認定をしていても予想以上の多額の請求をされることがあります。
「限度額適用認定をしたけれども間に合わない。」と言う場合には、高額医療費貸付制度があり、健保組合から高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で貸付をしてくれます。
必要書類を提出すれば1週間ほどで振り込まれ、返済に関しても高額療養費の支給決定がされた際に貸し付け分を相殺した金額が指定口座に振り込まれるので、別途返済する必要はありません。
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交通事故で遷延性意識障害となっても、個室の利用料を加害者側に支払わせるのは難しいと言える。
遷延性意識障害になると、やがて施設療養を続けるか、自宅療養するかを選択することになるが、保険会社の意見をうのみにせずに熟慮の上で選択しなくてはならない。
交通事故により遷延性意識障害となった場合の示談の時効は、交通事故後3年ではなく症状固定後3年になるため、時効を気にして無理に症状固定をする必要はない。
3カ月以上入院している患者に対して健康保険が病院に支払う保険点数は激減するので、遷延性意識障害の患者は、入院から2カ月以上経つと、病院側から転院を促される。
交通事故の遷延性意識障害の示談の場合、示談のタイミングが難しいのと示談金額の交渉が難しいため、弁護士に任せた方が良い。