若年の遷延性意識障害患者におこる特有の問題点とは?
遷延性意識障害の患者数は、全国で推定5万人がいると考えられています。
遷延性意識障害の患者数は増加傾向にありますが、増加の理由としては医療技術の進歩が挙げられます。
以前の医療技術であれば助からなかった命も、高度医療により命を救うことができたり、以前ならば延命の限度が1カ月であった症状でも、半年・1年と伸ばすことが可能になったことが挙げられます。
遷延性意識障害の患者の年齢分布は正式な統計がないためはっきりしませんが、岡山県内の遷延性意識障害の患者を調査した内容を見ると、患者の平均年齢は68歳7カ月と高齢者が圧倒的に多いことがわかります。
これは、遷延性意識障害の原因の約70%が、脳溢血や心臓麻痺などの病気によるものであるため、若年層よりも発症率の高い高齢者が多くなっていると考えられます。
同資料を見ると、交通事故による遷延性意識障害の患者は約20%で、落下などのその他の事故によるものが5%になります。
若年の遷延性意識障害の患者の問題点
交通事故による遷延性意識障害の患者の特色としては、幼児や若年層から高齢者まで幅広く年齢分布があるということです。
特に若年層においては生命維持のための身体能力は健康であるため、脳障害が起こった場合でも遷延性意識障害の状態で生存することが多くなります。
遷延性意識障害の患者家族からすれば、「生きていてくれるだけでもうれしい」と思われるかもしれませんが、若年の遷延性意識障害の患者特有の問題をはらむことがあります。
若年の遷延性意識障害の患者は、リハビリの効果が出やすく遷延性意識障害の状態を脱することもありますが、そのままの状態で健常者の寿命を全うする例も少なくありません。
もし、遷延性意識障害の患者が30歳の男性ならば、平均余命は46年となるため、46年間の介護が必要になると言えます。
46年にもわたる長期の介護の場合、介護費用の問題に加えて、介護人の確保も必要になります。
また、患者の家族が両親のみといったケースでは、両親が逝去した後の患者の身の振り方など、患者家族が生前に解決しておかなければならない問題が山積みとなってしまいます。
患者家族に兄弟がいた場合でも、遷延性意識障害患者の看護を両親の死後に引き継ぐことを強要できないため、「兄の介護は両親に任せていたので、両親が亡くなってしまってから、あわてて手続きなどに奔走する」といったケースもよくおきます。
こういったことを避けるためにも、交通事故の示談の段階で弁護士に依頼をすることをお勧めします。
弁護士に依頼することにより保険会社に対して将来的な介護料を請求できるだけでなく、保険金を受け取り後の患者名義の資産の保護や、介護人である両親が亡くなった後の患者の利益保護の方法などを、弁護士と相談の上事前に準備することができます。
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遷延性意識障害の患者を自宅で家族が介護する場合、家族による介護費用の補償がされることがあるが、絶対的なものではないため、示談前に弁護士に相談をするほうが良い。
遷延性意識障害患者を自宅介護する場合には、おむつ以外にも衛生管理用品が必要となり、費用が負担となる事がある。弁護士に示談を頼んでおけば、そういった費用も含めて請求をしてもらえる。
介護人が先に亡くなり遺された遷延性意識障害患者は、弁護士などが成年後見人となり、遷延性意識障害の患者名義の資産で治療を受け続けることが一般的である。
遷延性意識障害の後見人と実質の介護を行う家族が違う場合には、家族の意に沿わない示談を代理人が行ってしまう事もあるので、事前に弁護士に相談をして示談方針を固めておく方が良い。
交通事故により遷延性意識障害となった場合、自宅介護を認められるにはいくつかの条件がある。裁判で認められて適正な介護費用を提示されるためには、弁護士に依頼するのもひとつの手である。